ニュース

2021年12月08日 MICE市場トピックス10月号を公開します

台湾市場、マレーシア市場、およびスペイン市場についてレポートします。

① MICE関連の旅行会社や関係団体の動向
② MICE関連の訪日意欲の有無・変化
③ イベント開催の有無とその感染症対策
④ その他の特記すべきトピックス、ニュース (特筆する情報がない場合は、当該番号に「なし」と記載しています。)

本情報の転送や媒体掲載はご遠慮ください。

【英国・フランス市場】
JNTOロンドン事務所とパリ事務所が参加した3件のMICE関連イベントについてレポートします。

(1) The Meetings Show UK(開催地:ロンドン、開催日:9月30日~10月1日)

旅行メディアのNorthstar Travel Mediaが主催するThe Meetings Show UKがハイブリッド形式で開催され、セミナーや商談会が行われた。オンラインよりリアル参加を優先したバイヤーが多かったもよう。リアル参加したバイヤーへJNTOロンドン事務所がヒアリングしたところ、具体的な案件のためというよりは、久々に挨拶をするために参加している人が多かったのではないか、とのこと。殆どの会社は国内あるいは短距離のインセンティブ旅行を計画しており、長距離インセンティブ旅行はまだ考えていない様子であった。

(2) Pure Meetings & Events International(開催地:パリ、開催日:10月4日)
 

 2021年3月から延期されていたPure Meetings & Events Internationalがリアル開催され、セミナーや商談、ネットワーキングが実施された。バイヤーは代理店から約200名強、インハウスのMICE部門を有する企業から約100名強、学協会から約30名強、合計で350名が参加登録をしていた。出展者は20か国から60団体で、コンベンションビューロー、政府観光局、ホテル、施設、DMCなど。大半がヨーロッパからの参加だった。
冒頭に行われたMPI(Meeting Professionals International)によるセミナーでは、「これからのイベントの新しいパラダイム」というテーマに沿って、ヨーロッパにおけるMICE業界の状況や、サステナビリティに関する現状、デジタルイベントについての講義が行われた。ヨーロッパの主催者は現在、オンラインよりも最大300名程度のリアル、もしくはハイブリッドのイベントを好んで開催しているとのこと。
JNTOパリ事務所が行った商談は、2019年以前に比べると少ないものではあったが、実際に日本でイベントを開催することに興味を持っているバイヤーも複数いた。現在の日本における新型コロナウイルスの状況や、渡航制限の解除に関する見通しなどを聞かれることが多かった。

【英国・フランス市場】<br> JNTOロンドン事務所とパリ事務所が参加した3件のMICE関連イベントについてレポートします。
【英国・フランス市場】<br> JNTOロンドン事務所とパリ事務所が参加した3件のMICE関連イベントについてレポートします。

(3) ICCA Congress 2021 Paris Regional Hub(開催地:パリ、開催日10月25日~10月27日)

ICCA(国際会議協会)の地域会議が世界各地で行われ、JNTOパリ事務所からパリ地域の会議に出席した。ハイブリッド形式で開催され、参加者は29か国から280人、主にコンベンションビューロー・会場・PCOなどのコンベンション業界のサプライヤーと、加えていくつかの学協会からの参加者もいたが、ほとんどがヨーロッパ、特にフランス語圏からの参加だった。
セミナーのテーマは、会議業界と学協会の現在の傾向及び将来の見通し、テクノロジーとハイブリッドイベント、持続可能性、平等と多様性を中心に展開され、ポストコロナでは長期滞在の旅行が少なくなる可能性があることや、デジタル疲れでウェビナーに参加する人が減少していることなどが話された。セミナーの合間には昼食・夕食に加えて多くのネットワーキング休憩が設けられ、参加者同士のディスカッションが可能となっていた。

【台湾市場】

① 10月~11月に発表された2021年の台湾GDP成長率予測は前年比5.8~6.1%と好調な傾向。旅行業界でも卒業旅行などの域内旅行が増加してきており、給与を支払わず従業員に休暇を強制取得させる「無給休暇」を実施する企業は、旅行会社を含む「支援サービス業」において8月~9月頃から減少傾向にある。
2022年1月~2月の旧正月や、4月の花見シーズンに合わせた訪日旅行商品の予約が一部の旅行会社で開始され、訪日ビザ発給や渡航制限の解除時期に関する問い合わせが相次いでいる。台北市日本工商会(台北及び近郊に事務所を有する日本法人等で形成する組織)が、台湾政府への提言や要望を盛り込んだ2021 年版白書を10月に提出し、その中で日台間のビザ発給規制の緩和や「トラベルバブル」の実施検討も要求している。
10月から台湾元の対日本円相場が上昇しており、SNS上には「いずれ訪日するので今のうちに日本円へ両替しておこう。」というようなコメントもみられ、訪日意欲は依然として高い。
② 訪日関連イベントとしては、10月9日には『タイガーエア台湾』が、プロ野球球団の楽天モンキーズと連携した訪日観光プロモーションを実施。球場外に日本の自治体による観光ブースが設置され、多くの人が来訪し盛り上がった。また11月6日には、『誠品生活』が、基隆の日本統治時代建築物で3か月の期間限定の店舗をオープンし話題となっている。台北の旅行会社も、日本の雰囲気を味わえる日本統治時代建造物内で訪日商品紹介イベントを開催するなど、日本の古い建築や「昭和レトロ」のものは台湾において人気がある。
③ 感染症の状況が落ち着いてきたことに伴い、9月27日よりイベントの人数上限が撤廃され、飲食禁止やスタッフのワクチン接種義務等の条件はあるものの、展示会や大型会議の開催が可能となった。10月22日~10月25日に台中に開かれた台中国際旅行展(ATTA)では、来場者数は4日間で約14万人であった(2019年約18万人 2020年約8万人)。

【楽天モンキーズと連携した訪日プロモーションの様子】
【楽天モンキーズと連携した訪日プロモーションの様子】
【日本統治時代の建造物内で開催されたイベントの様子】
【日本統治時代の建造物内で開催されたイベントの様子】
【日本統治時代の建造物内で開催されたイベントの様子】
【日本統治時代の建造物内で開催されたイベントの様子】

【マレーシア市場】

① 10月11日よりワクチン接種が完了しているマレーシア人の海外渡航が許可され、2022年春以降の海外インセンティブ旅行先を検討する企業が出始めている。同日よりワクチン接種完了者の国内旅行も解禁されたことから、現在旅行会社は国内旅行の取り扱いを中心に営業しているが、LCCのエアアジアがクアラルンプール~タイ・プーケット線の運航を、またマレーシア航空がクアラルンプール~プノンペン線の運航再開を発表するなど、海外との往来も少しずつ正常化に向かっている。11月末からはシンガポールとマレーシア間で空路での渡航者を対象に、ワクチンの接種完了を条件として互いに隔離なしでの入国を認めることになった。米国でもこのほどマレーシアからの入国が可能になり、またマレーシア政府は英国とも入国規制の緩和に向けた交渉を進める方針だと現地メディアは報じている。
② 訪日インセンティブ旅行に関しても、JNTOクアラルンプール事務所への問い合わせが増えてきている。一部の現地旅行会社によると、新型コロナウイルスの感染が抑えられている地域ということで、日本、オーストラリア、ニュージーランドを検討している企業が多いとのこと。また別の現地旅行会社では、3月~4月に日本のゴールデンルートで桜を見に行きたい、4月下旬~5月に掛けて北海道の桜を見にいきたいという問い合わせも多いが、エアアジアの新千歳線、タイ国際航空の新千歳線の再開が見込めないことがネックになっている。
③ クアラルンプールを含む首都圏では、会場本来の収容人数でイベント開催が可能となった。ワクチン接種完了者に加えて、ワクチン接種未完了者でもイベント参加前に薬局・コンビニ等で販売されている自己検査キットを用いて検査することで参加可能となる。
④ マレーシアのランカウイ島では、11月15日よりワクチン接種が完了した外国人観光客の受け入れを再開する予定。

【スペイン市場】

① スペインにおける新型コロナウイルスの新規感染者減少に伴い、全国各地で様々なイベントが再開され、スポーツイベントなどもコロナ禍前に近い観客数の入場が可能となった。ビジネス旅行やインセンティブ旅行なども徐々に再開されているが、殆どが国内または欧州などの近隣諸国へのものである。
スペインコンベンションビューロー(SCB)によるアンケート調査によると、2022年にはスペイン全国のコンベンションビューローの68%がイベント開催は年間100件以上に到達すると予想しており、コロナ禍前と同水準のイベント数に戻れるとしている。2020年に開催が見送られたイベントの90%が新しい日程に変更されており、2021年から2022年に再び開催されることになっているが、これらのイベントを実現するためには、ワクチン接種、会場内の感染防止安全対策やプロトコルの実施、そしてイベントのプロモーション事業やコロナ感染の際に適用可能なキャンセル保険の契約に加えて、会場内の移動制限やコントロールなどが重要であることが説明されている。 一方で、全国で開催される会議やイベントにおけるクラスター感染のリスクが現地メディアで報道されている。各会場では可能な限り感染防止策がとられているものの、入場者数が多い場所では実際にクラスター感染が発生したケースも出ている。
② JNTOマドリード事務所に対しても、ビジネス旅行の再開に関する問い合わせが徐々に増加している。訪日意欲は依然として高く、現地の旅行会社からは一般旅行者が再び訪日できる時期や、渡航制限解除の見通しに関する問い合わせが増えている。現地メディアから訪日MICEのプロモーションや、広告掲載に関する問い合わせも来ている。
③ 9月29日にスペイン保健省は、国内の大型スペースで開催される催しの収容人数は、屋外やオープンスペースで開催される場合は最大収容人数を100%、屋内会場で開催されるものについては最大収容人数を80%とし、更に最低1.5メートルの対人距離を保つことを原則とすると発表した。屋内外共にマスクの着用、スタジアム内では喫煙・飲食の禁止などの措置は継続されている。
10月26日~10月28日まで、マドリード国際見本市会場(IFEMA)にて「第8回World ATM Congress」及び「第7回Expodrónica」が開催された。主催者側が発表した情報によると、3日間で約5,400人以上の関係者が参加し、172社の出展者の商品やサービスが紹介されると共に、7つの会場で170以上の講演会が行われ、航空業界、産業界、行政、大学などから200人以上の専門家がプレゼンテーション、パネルディスカッション、デモンストレーション、商品発表会などに参加した。
④ 前述のSCBによるアンケート調査では、実際に参加する対面形式イベントの重要性が低下し、ハイブリッド形式が有利になるという傾向がみられると発表された。一方、このパンデミックは多くのMICE開催地にとってある意味でチャンスとも受け止められており、予定されていたイベントが一定期間休止することによって施設の近代化が促進され、これによってユニークベニューなどの競争力向上に好ましい影響を与えている、とも伝えられている。また各地のコンベンションビューローでは顧客の信頼を高めるため、感染防止対策や独自のセキュリティプロトコルの導入、各地域で施行されている規制への準拠など様々な活動が実施されているという。

転載禁止(©JNTO)
<JNTO担当部署> MICEプロモーション部
 TEL:03-5369-6015 E-mail:convention@jnto.go.jp