主催者の声

世界のアカデミアと
つながる国際会議の魅力

若手研究者はどのように国際会議を
自身の研究に活用しているのでしょうか。
JNTOでは、日本学術会議若手アカデミーの
岩崎代表、安田副代表、
また日本学術会議若手アカデミー
グローバルヤングアカデミー総会
国内組織分科会の新福委員長、
岸村副委員長をお招きし、
若手研究者にとって国際会議や
シンポジウムを開催する意義について、
お話をうかがいました。

<目次>
  1. 学術の未来を担う若手研究者たち ~日本学術会議若手アカデミー~
  2. 国際会議の開催は、将来に向けた研究ネットワーク構築やフィールド理解の機会
  3. 参加者コミュニケーションを促進する開催地での体験
  4. JNTOやコンベンションビューローに求められる国際会議開催へのサポート
  5. 将来を見据えた小規模会議の開催と次の世代を会議運営に巻き込む仕組み
  6. 多様な世代に開かれたGYA総会・学会で若手研究者のビジョンを世界に発信

JNTOやコンベンションビューローに求められる
国際会議開催へのサポート

川﨑: 今お話があったように、国際会議の開催にはプラス面も多い一方で、開催にあたってはやらなければならないことも多いですよね。

新福: 2018年の政府に対する科学助言に関する国際ネットワークの東京開催で、日本学術会議若手アカデミーとしてワークショップを開催しました。初めての事務局で、参加者に日本での滞在を楽しんでいただくことには手が回りませんでした。国際会議の開催をサポートしてくださる組織や制度を知っていれば、私たちは会議に集中ができ、参加者には会議とともに来日機会をもっと有意義にしていただけたのではないかと思い返しました。

川﨑: JNTOが国際会議の誘致・開催支援をしていることをご存じでしたか。

岸村: インバウンド旅行を促進している機関としてJNTOの名前は知っていましたが、国際会議の誘致や開催支援をしていることは知りませんでした。福岡で会議を開催した際には、地元の福岡コンベンションビューローに相談をしましたが、主催する側にとって、開催都市から会議開催への支援メニューや地元の観光情報などを得られることはとても重要です。また、誘致・開催の手順や予算などの事例集、また規模に応じた助成金支援もあれば嬉しいですね。参加者の規模で負担感は大きく変わりますが、特に規模が大きな会議の開催には、過去に開催の経験がある方が身近にいることも必要だと思います。

安田: GYA総会・学会の準備に携わっていますが、国際会議の開催には人、時間、費用などのコストが思う以上に必要であることに驚きました。組織体制や全体のスケジュール、予算管理、ビザの手配などについて、参加者人数の規模別に前例を知ることは大きな助けになります。

岩崎: 私は、先に触れたISCB-Asia会議の日本誘致のため、JNTOの海外キーパーソン招請事業(Meet Japan)を活用しました。Meet Japanでは、私が誘致しようとしている学会を含め10数人の国際学会の担当者が日本に招請されており、ウェルカムレセプション、各都市の魅力や支援情報を得られる商談会、候補都市の視察等、自分たちだけでは実施できない内容の濃いパッケージとなっていました。新型コロナウイルス感染症の拡大で開催が延期されていますが、この時の印象が良かったこともあり、日本開催に向けて検討が進んでいます。

川﨑: 先ほど、組織体制や全体のスケジュール、予算管理などについて、前例を知りたいというお話がありましたが、JNTOでは誘致活動のプロセス、開催決定から会議終了後の事後処理までのプロセスを紹介する「国際会議誘致マニュアル」、「国際会議開催マニュアル」を発行しています。また、全国の主要都市における国際会議助成制度や会議・宿泊施設等を紹介する「日本コンベンション都市ガイド」も制作しています。加えて、国際会議やシンポジウムの開催を検討されている主催者の方向けに「国際会議主催者セミナー」を実施しています。実際に会議を開催された主催者のご経験をケーススタディーとしてお話いただくことで、ノウハウの共有に役立てていただいています。

岩崎: 「日本政府観光局」という名称が、特に若手研究者から見ると、ちょっと敷居を高く感じさせているのかもしれませんね。実際には、このようなマテリアルや支援が準備されていますので、国際会議を誘致・開催する際の相談先として、より多くの研究者にJNTOやコンベンションビューローの存在を知っていただくことが重要だと思います。

総会の様子
Meet Japan(2019年度)
Meet Japan(2019年度)
Meet Japan(2019年度)
Meet Japan(2019年度)

将来を見据えた小規模会議の開催と
次の世代を会議運営に巻き込む仕組み

岩崎: 若手研究者の最初のステップは50人程度の会議開催だと思います。JNTOには小規模な会議開催に対するモデルプランの提示やエクスカーションのサポートもお願いしたいと思います。若手がもっと気軽にJNTOに相談ができる環境が整えば、将来的に、より大きな規模の会議開催にもつながるのではないでしょうか。

新福: 周りの研究者を国際会議やその運営に巻き込んでいくことも課題だと捉えています。先に述べたヨルダンでの会議のように、会議の中で若手研究者をよりコミットさせる仕組みを作っていくことで、次の世代を取り込んでいくことができるのではないかと思います。

岸村: 若手研究者に会議を活用してもらう仕掛けなど、会議参加からホスト側への循環づくりも重要ではないかと考えています。また、先に台湾の知人による日本での会議開催について触れましたが、海外主催者が日本で開催する場合の問い合わせ先やサービスの紹介も必要だと感じます。

川﨑: 私共も、小規模会議から開催を始められる若手研究者の皆さんに、もっとJNTOや全国のコンベンションビューローの活動を知っていただき、先生方の国際的な研究交流をサポートできるよう注力したいと思います。

総会の様子

多様な世代に開かれたGYA総会・学会で
若手研究者のビジョンを世界に発信

川﨑: さて、2022年6月に、GYA総会・学会が開催の予定ですが、どのような経緯から誘致することになったのでしょうか。

新福: 2010年にドイツの学術会議を母体に誕生したGYAは、総会・学会を欧米の先進国と途上国で交互に開催してきました。GYAのメンバーとして、日本から選出された先輩たちがご活躍をされていたのですが、日本でGYA総会・学会を開催するためには、今年度ではない先の予算確保が困難で、数年間のスパンで取組む招致に悩みました。日本学術会議での予算申請ルールの改定と寄付金集めの目途が立ち、10年越しの諸先輩方の思いを紡いだ日本での開催が決定しました。

川﨑: 会議の見どころを教えてください。

新福: 第12回総会・学会は、「感性と理性のリバランス」をテーマに掲げています。これまで科学者は理性によって正しい情報を伝えることが重要だとされてきましたが、社会の中で実際の行動に移していくには、感性への訴求も必要であるという問題意識から本テーマを取りあげており、これを人文社会科学の視点から議論するセッションも準備しています。一つの学術分野では解決ができない社会問題に対し、問題意識をもって取り組んでいくために重要な会議であり、分野に関わらず若手科学者や学生、また民間企業や行政など広く参加いただき、開かれた会議にしたいと考えています。

岸村: 会場である九州大学伊都キャンパスは福岡市内からは郊外に位置し、海もある豊かな自然を楽しんでいただきたいと思っています。また学術の会議開催地としての福岡には学問の神様を祀る太宰府天満宮があり、そのような歴史的な名所をエクスカーションとして活用したり、バンケットの会場に博物館が使えないかなども調整しています。

新福: 会議では、シチズンサイエンス、デジタルテクノロジーやICT、SDGsなど、多様な世代に関係するトピックスを準備しており、参加者の皆さんとの対話を楽しみにしているところです。一方で、新型コロナウイルスの感染状況とそれに関連する海外渡航者の日本への受入が懸念事項です。日本での隔離期間の緩和が実現できなければ、オンラインをメインとするハイブリッド開催にせざるを得ないかなと考えています。

総会の様子
総会の様子
総会の様子
総会の様子

川﨑: 最後にGYA総会・学会を通じて発信したいことについてお聞かせください。

安田: 九州大学伊都キャンパスには世界的にも珍しい生物多様性を保存するゾーンがあり、都市の開発と自然環境の保全が両輪で進められています。より多くの人にそれを知っていただくためのプログラムも計画しており、これを通して次世代を担う若手研究者に、ぜひこの自然との共生の精神を引き継いでいただく機会になればと思います。

岸村: GYA総会・学会が開催されたことをきっかけに、自分たちよりも若い世代がこのような国際的な場を学内外に設けていきたいと思えるような、レガシー効果をもたらすことができればと考えています。

新福: 日本のアカデミアのプレゼンスが弱くなっていると言われる中、科学者はどうあるべきかを問い直し、日本がリーダーシップをとる姿をお見せすることで、日本を元気にしていきたいです。

岩崎: それぞれの学問分野で専門性を持った研究者が、志を持って参加するGYAだからこそ、若手研究者がどのようなビジョンを持って活動をしているかを内外に知っていただく機会にしたいと考えます。また、学術研究が、長期的な視点で社会の課題解決にも役立つことをお伝えできればと思っています。

川﨑: 国際会議の日本での開催は、世界の中で日本の研究のプレゼンスを示し、リーダーシップをとりながら国際ネットワークを構築できる貴重な場だと思います。加えて、日本の自然や文化、高度な技術力を有する企業群など、日本をトータルにプレゼンテーションできるショーケースでもあります。JNTOでは国際会議の誘致・開催の支援を通じて、先生方の国際的な研究交流や情報発信をサポートできれば考えていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

「第12回グローバルヤングアカデミー総会・学会」

開催期間 2022年6月12日~2022年6月17日
開催都市/会場 福岡 / 九州大学 伊都キャンパス
ウェブサイト http://gya2022.com/