「第21回アジア胸部心臓血管外科学会」を開催して

三井記念病院院長

高本 眞一 様

国際会議主催者の生の声をお伝えする本コーナーの第18回目は、2013年(平成25年)4月に神戸市で開催された「第21回アジア胸部心臓血管外科学会」で会長を務められた三井記念病院院長 高本 眞一 様よりコメントをいただきました。

会議概要

開催期間2013年(平成25年)4月4日 から 4月7日 まで
開催都市/会場神戸市 / 神戸国際会議場、神戸ポートピアホテル
参加者数1,027名(外国からの参加者数383名)

立候補について

日本として立候補するに至った経緯をご教示下さい。誘致から開催決定までのプロセスについても教えてください。

アジア心臓血管胸部外科学会(ASCVTS)は、もともと国際心臓血管外科学会のアジア支部として1993年に発足しました。アジア地域の心臓血管外科の発展に貢献していましたが、2007年より欧米の胸部心臓外科学会とも協調するために胸部外科(呼吸器外科・食道外科)も活動範囲に入れることになりました。現在、アジア地域で唯一会員制のある胸部心臓外科学会として活動しています。一昨年のタイ・プーケットと昨年のインドネシア・バリでの学術集会では参加者数は1,000人を越えています。8~10年に1度は日本で開催することになっていましたので、学術的にも充実した内容の学会にしようと立候補し、理事会の話し合いで日本開催が決まりました。決まった後で東日本大震災が起こりましたが、日本で国際学会を開催することで少なからず震災復興に貢献できるのではないかと考え、開催候補地として阪神淡路大震災を経験し回復した神戸を選び、神戸をSymbol City of Recoveryと大きく謳いました。

立候補する上で工夫された点をご教示下さい。

ASCVTSはアジアのみならず、欧米の学会とも更なる国際的な協力体制を築こうと、欧米のリーダー達との交流も盛んになっていました。心臓血管胸部外科領域でのアジアのレベルはここ数年で上がっていたものの、まだまだ欧米から学ぶことは多くあります。学会全体の学術的なレベルアップを目指し、シンポジウムの内容、演者等は世界的な観点で考えました。組織委員会には日本での心臓血管外科学会、胸部外科学会の理事全員に加入してもらい、日本全体での協力体制を築きました。

「立候補で成功するための秘訣」は何でしょうか。

ASCVTSの普段の活動に日本の会員が深くかかわっており、国際交流を種々な国際学会を通じて熱心に行ってきたことが、立候補から大会開催に至るまで成功裡に終わったことの原因であると思います。

神戸には、復興支援のための学会招致の体制が素晴らしく整っていました。とくに助成制度は充実しており、神戸市助成金、中内コンベンション振興財団といった助成金をいただけそうでしたので、経済的な心配をさほどせずに立候補することが出来ました。東日本大震災の復興はまだまだ道半ばですが、とくに東北地方においては、先例の神戸に倣っていただけたらと思います。

会議開催について

会議を実際に開催するにあたって工夫した点、をご教示下さい。

ASCVTS2013の開催決定後は、全国の心臓血管胸部外科医の専門性を生かし最良のプログラムを作ろうと、開催1年半前より組織委員会を立ち上げ、時間をかけて内容を吟味してきました。

また、この学会は皆で一緒に作る学会だと喚起する意味もあり、私を含め組織委員会のメンバーからは、JNTOを通じた寄付金を募りました。組織委員会のメンバーは無料で会議に招待するのが通例で、お金を請求することはないことから、寄付が集まるかは半信半疑でしたが、蓋をあけたら皆好意的に賛同してくれました。こうした心臓血管胸部外科医たちの熱意の波に押され、各企業にも協力的な姿勢で参加していただけました。

大切なことは学会の内容で、規模の差はどうあれ、しっかりした内容であれば、協力者は自然と増えていくのだと思います。

会議開催後の感想

会議開催において心に残ったことがありましたら、ご教授ください。

ASCVTS 2013 は皆さまの協力により、内容的に充実したものを打ち出せたことから、その延長として、ソーシャルプログラムの充実についても検討するようになりました。オープニングでは、日本を代表する太鼓集団・鼓童の演奏を、ガラディナーでは世界の歌姫・由紀さおりのディナーショーを実現しました。諸外国からの参加者にとっては、学術的な刺激のみならず、優れた日本の文化にも触れていただけたと自負しております。

失敗談としては、細かい点では数えきれないほどありますが、一部、価格表記をドル建てで記載していたことで、急激な円安が進んだ時期に、一時ヒヤヒヤしたことがありました。国際学会の場合、為替の変動もかなり意識しておく必要があると実感しました。

各国の学会、特に欧米の学会では夜のパーティーが多種多様で、パーティーに参加することも学会参加の楽しみのひとつです。国際学会のパーティーは世界へ向けて日本の文化を紹介する良い機会でもあります。通例にとらわれず、皆で考えていけば、意外な視点で楽しい空間が生み出されることがあるのではないでしょうか。