「第32回国際泌尿器科学会総会」を開催して

九州大学大学院医学研究院 教授

内藤 誠二 様

国際会議主催者の生の声をお伝えする本コーナーの第17回目は、2012年(平成24年)9月に福岡市で開催された「第32回国際泌尿器科学会総会」で組織委員会委員長を務められた九州大学大学院医学研究院 教授 内藤 誠二 様よりコメントをいただきました。

会議概要

開催期間2012年(平成24年)9月30日 から 平成24年10月4日 まで
開催都市/会場福岡市 / 福岡国際会議場ほか
参加者数3,217名(外国からの参加者数1,886名)
参加国・地域数94カ国・地域

泌尿器科学の分野で最も歴史のある国際会議であり2012年の日本での開催は42年ぶり2度目となった。

立候補について

日本として立候補するに至った経緯をご教示下さい。また、誘致から開催決定までのプロセスについても教えてください。

国際泌尿器科学会(Société Internationale d'Urologie: SIU)は1907年にパリで創立され、現在100カ国以上が加盟する泌尿器科学の分野において最も歴史のある国際学会である。日本泌尿器科学会 (JUA)では学会創立100周年に当たる2012年に、第16回東京大会(1970年)以来42年ぶりの SIU 開催を目指して誘致活動を行ってきた。2009年の理事会で書類選考により日本の横浜、大阪、福岡、オーストラリアのブリスベン、メルボルンの5都市が最終候補都市として選出され、学会の視察団による会場施設、ホテル、交通アクセス等についての訪問評価を受けた。私はJUAの理事長として、翌2010年の上海大会の理事会で、国内3都市について平等な立場で最後の presentation を行った。その後理事会で話し合いが行われ、全会一致で福岡が2012年の開催都市に決定された。

立候補する上で工夫された点をご教示下さい。

SIU 開催をJUA会員の総意として行うことを明確にし、組織委員会はJUA理事長、国際的に豊富な人脈を擁するJUAの名誉会員や主要大学教授、さらには地元企業の代表を加えた全国的かつ強固な組織とした。また、早い段階から国内候補都市にも協力を要請し、応諾を得た。これを背景に、JUA、地元政財界の全面的な支援のもと、多くの参加者が期待できること、財政的な不安がないこと等をアピールした。また、日本開催の動機付けとして、SIU は1970年の東京大会以来長く日本で開催されていないこと、開催予定の2012年はJUA 創立100周年の記念すべき年に当たること、日本人のSIU会員数は米国に次いで世界で2番目に多く、学会活動に大きく貢献していることを強調した。

「立候補で成功するための秘訣」は何でしょうか。

母体学会の日本人会員を増やして、積極的な学会活動を行うとともに、理事会での貢献等を通して、日本のプレゼンスを高めておくことが絶対に必要である。特に理事会には英語が堪能で、積極的に活動する日本人理事を擁立し、普段から地道なロビー活動を行うことが重要である。そのうえで、関連国内学会や地元政財界が一体となって国際会議を誘致したいという熱意、会場施設や公共交通機関の充実、日本の安全性等をアピールすることが重要である。また、開催都市の選考委員を納得させるような日本開催の動機付けを明確にしておくことも重要である。視察団への対応には地元の政財界との橋渡しや観光地の紹介等を含めたコンベンションビューローの協力も不可欠である。

会議開催について

会議を実際に開催するにあたって工夫した点をご教示下さい。

国際会議の開催に際しては、地元の行政・企業・コンベンションビューローの協力が不可欠であるが、今回のSIUでは、福岡市や地元企業に福岡市の国際的認知度を高める絶好の機会であることや経済効果も見込めることを十分説明して、全面的な支援を頂くとともに、学会運営会社(PCO)や組織委員会との連携も上手く図ることができた。

会議の運営法については、国内および海外で大きく異なっており、国内学会運営会社と学会本部との間でうまくコミュ二ケーションが取れないことも多く、苦労があった。

学術会議と展示の会場は隣同士の建物ではあったが、往来するには一旦外に出なくてはならず、学会本部、展示企業には展示会場への来訪者が少ないのではないかという危惧があった。しかも、海外企業が極東の日本まで展示機器を持ち込むにはかなりの費用を要するため、参加にあまり積極的ではなかった。このため展示企業からの収入が予想よりかなり下回った。今後は学術会議会場と展示会場が一体となった会場造りが望まれる。

会議開催後の感想

会議開催において心に残ったことがありましたらご教示下さい。

日本学術会議との共催にしていただき、皇太子殿下にご臨席頂いた開会式は、極めて格調高いイベントとなった。皇太子殿下の心温まるお言葉やご退席される際に、国籍を問わずご参加の皆様からごく自然に発生したスタンデイングオベーションは今も心に残っている。

学会は泌尿器科学の最新の情報を交換するとともに、日本の泌尿器科の、レベルの高さを世界にアピールする機会となった。また、若手泌尿器科医には海外の高名な先生方と交流を深める良い機会となった。

SIU ナイトと称する会員懇親会は、世界各国からの参加者にお互いの交流促進はもちろん、開催地の文化への理解を深めて頂くという趣旨で開催されるものであるが、今回は福岡市や福岡コンベンションビューローのご支援のもと、川端商店街、櫛田神社界隈を使って開催した。一般市民も巻き込んで行われたこの斬新な懇親会は、SIU ナイト本来の趣旨に沿ったこれまでで最高のイベントとなり、国内外の参加者はもちろん、地元商店街にも極めて好評を博した。地域に密着したこのような懇親会は安全性の面から恐らく日本でしかできないものであり、今後ひとつのトレンドになるかもしれない。しかし、福岡の会議場、ホテル、交通、飲食店などはまだまだ外国人に十分対応できる人材が不足している。国際会議成功のためには英語対応が十分可能な人材の育成が必要である。