「第61回パグウォッシュ会議世界大会2015」を開催して

広島大学 教授

稲垣 知宏 様

国際会議主催者の生の声をお伝えする本コーナーの第30回目は、2015年(平成27年)11月に長崎市で開催された「The 61st Pugwash Conference on Science and World Affairs “Nagasaki’s Voice: Remember Your Humanity”」で実行委員会委員長を務められた広島大学 教授 稲垣 知宏 様よりコメントをいただきました。

会議概要

会議正式名称第61回パグウォッシュ会議世界大会2015
The 61st Pugwash Conference on Science and World Affairs “Nagasaki’s Voice: Remember Your Humanity”
開催期間平成27年11月1日から11月5日まで
開催都市/会場長崎市/やすらぎ伊王島
参加者数192名(外国からの参加者数129名)
ウェブサイトhttp://pugwash.org/

立候補について

日本として立候補するに至った経緯をご教示下さい。また、誘致から開催決定までのプロセスについても教えてください。

パグウォッシュ会議の起源は、1955年7月に核の脅威と戦争の廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言に遡ります。ラッセル・アインシュタイン宣言を受け、1957年7月カナダのパグウォッシュ村に世界の科学者が集まり、核兵器の廃絶、科学者の社会的責任について話し合ったのを皮切りに、継続的に会議が開催されるようになり、世界の科学者が科学と社会、戦争と平和の問題を議論する貴重な場を提供してきています。日本では、被爆50年、60年という節目の年、1995年、2005年の2回、パグウォッシュ会議世界大会が広島で開催されていました。2015年は、被爆70年という区切りの年であり、最後の被爆地長崎に触れることから議論を行い、核の脅威を再認識すると同時に新たな展開を期待し、開催地として立候補しました。2013年の秋にトルコで開催された評議会の話し合いでは、資金の目処をつける等の意見がでましたが、皆様の賛同をいただき採択に至りました。

立候補する上で工夫された点をご教示下さい。

立候補を表明するおよそ半年前に、これまでの会議参加者が中心となって準備委員会を立ち上げました。準備委員会では、開催のために必要な人材、資金、設備、準備期間等を、最近の開催国関係者に問い合わせ、また前回、日本開催時の記録を確認し、開催候補地で十分な準備が可能かを調査すると同時に、候補地の地方自治体、地元大学等と立候補に向けた相談を進めました。日本開催の意義、期待される成果等について検討を進め立候補書類を作成する上で、地元関係者の意見は大いに役立ちました。準備委員会では、また、国内での組織委員会、実行委員会の立ち上げも進めました。組織委員会、実行委員会とは別に、これまでの関係者以外からも支援と助言を得るべく、諮問評議会と募金委員会を設置することとし、できる限り広い分野で人選を進めました。これにより、新しい視野の獲得、異なる分野へのアプローチが可能になりました。

「立候補で成功するための秘訣」は何でしょうか。

立候補の準備は、これまでの会議参加者が中心になって進めていきましたが、地元自治体、大学関係者ともコミュニケーションをとる中で、より魅力的な大会開催向けた様々なアイデアを得ることができました。これにより開催地の詳細なアピールポイントを立候補書類に反映できたことで、開催地決定に際し、具体的なイメージを持って判断いただくことにつながったと考えています。また、立候補段階では十分な資金を用意できるかどうかが明確ではなく、不安な点は不安な点として正直に述べたのですが、その後、いろいろな方から資金獲得に向けた助言、提案をいただくといったことにつながりました。このような経験から、国、地元コンベンションビューロー等から、会議等の準備委員会と地元自治体、大学、企業等とコミュニケーションするための、また会議開催で不安な点について専門家に相談するための支援をいただけると、たいへん有益であると考えます。

会議開催について

会議を実際に開催するにあたって工夫した点をご教示下さい。

会議を開催するにあたって、電車の吊り広告等を利用して開催地で積極的にアピールしたことで、地元の歓迎ムードが高まり、参加者の好感度も上がったと考えています。開催経費確保は、諮問評議会、募金委員会の助言の元、実行委員会が主体となって進めました。特に、地元自治体、大学関係者の協力は不可欠でした。財団の助成制度等にも積極的に応募し、若手の渡航旅費支援等を受けることができました。JNTOの交付金交付制度は、寄附団体、個人が税制控除を受ける上で必要であり、多くの寄附金がJNTOを通して寄せられました。今回の大会では、会議開催の1年半から募金活動の準備を始めたのですが、必要とする経費の見積もり等、書類の準備等に手間取り、募金活動を開始したのが会議開催のおよそ1年前となってしまいました。今後国際会議を開催する主催者で募金活動を必要とする場合には、十分な準備期間をとることをお勧めします。

会議開催後の感想

会議開催において心に残ったことがありましたらご教示下さい。

今回の会議開催では、利用施設における英語での対応が可能な者の配置、英字新聞の用意等、参加者が到着してから対応に追われた事項が多々ありましたが、開催地の自治体、大学、関連施設で強力なバックアップ体制をとっていただくことができ、直前の宿泊期間延長、送迎バスの増便、プログラムの遅延による食事時間の変更等、全ての要望に対して柔軟に対応いただきました。地元の皆様にはご負担をお掛けしましたが、大きなトラブルもなく、全ての参加者にとって満足のいく大会になったと考えています。他国での開催時と比較して劣る点は、ほとんど思いつきません。強いて挙げるとすれば、地方都市では公共交通機関での案内等、日本語のみの場合が多く、英語がより充実すると良いと思います。