「第18回世界社会学会議横浜大会」を開催して

東北大学大学院文学研究科 教授

長谷川 公一 様

国際会議主催者の生の声をお伝えする本コーナーの第23回目は、2014年(平成26年)7月に横浜市で開催された「第18回世界社会学会議横浜大会」で組織委員会委員長を務められた東北大学大学院文学研究科 教授 長谷川 公一 様よりコメントをいただきました。

会議概要

会議正式名称第18回世界社会学会議横浜大会
開催期間平成26年7月13日 から 7月19日 まで
開催都市/会場横浜市/パシフィコ横浜
参加者数6,087名(外国からの参加者数5,101名)

立候補について

日本として立候補するに至った経緯をご教示下さい。また、誘致から開催決定までのプロセスについても教えてください。

世界社会学会議は4年に1度開催される社会学界最大の学術イベントである。世界社会学会議の開催は、日本社会学会にとって、1960年代以来、50年あまりに及ぶ宿願だった。長い間、時期尚早という消極論が強く見送られてきたが、国際化への対応、財政状況、人材などを総合的に加味し、2006年から2014年大会の招致活動を開始した。2008年3月の国際社会学会理事会の投票で他の2都市(カナダのトロント、スペインのサラゴサ)を破り、横浜開催が正式決定した。東アジアで最初の開催となったが、日本側には、この機を逃すと、韓国や台湾、中国での開催が先行し、日本での開催は、20~30年後に遠ざかるのではないかという危機感も強かった。

立候補する上で工夫された点をご教示下さい。

日本社会学会を母体に組織委員会を立ち上げた。当初のメンバーは17人、最終的に2人を増員し、19人とした。組織委員会は、中堅・若手主体の、実働部隊的な、動けるメンバーを中心に組織した。日本社会学会の理事経験者には、組織委員会評議員に就任いただき、大所高所から助言いただいた。2007年から、日本社会学会大会に、国際社会学会の会長・副会長を順次1名づつ計7名を招聘し、講演いただいた。このことは、国際本部の役員と日本側とのパーソナルな信頼関係の確立のうえでとても役立った。日本社会学会は、2006年に韓国社会学会、2011年に中国社会学会、2012年に台湾社会学会との間で学術交流協定を結んだが、これらの学術交流協定も、世界社会学会議で東アジアの参加者を増やし、東アジアからの発信を高めるうえできわめて効果的だった。

「立候補で成功するための秘訣」は何でしょうか。

日本開催の意義、日本側の協力体制・支援体制を強調することの意義は大きい。海外は、開催地の大学やコンベンションビューロー中心に誘致活動をする場合が多い。日本で招致する場合には、学会の総力をあげて支援・取り組み体制をつくろうという気運を高めることが最大のカギとなろう。

JNTOによる、誘致にあたってカギとなる国際本部役員の招聘事業制度を使って、2007年に当時の国際社会学会会長を横浜市で開催の日本社会学会大会にお招きしたが、この招聘は、横浜開催の決定に、とくに効果的だった。

会議開催について

会議を実際に開催するにあたって工夫した点をご教示下さい。

福島原発事故の影響についての問合せが、2013年8月時点でも幾つかあった。丁寧に現状を説明し、理解してもらったが、福島原発事故の影響について、英語で正しい情報を、アップデートで公開していくことが重要である。古い情報のままで、更新がとどこおっているだけで、情報提供に熱心でないと受け取られる。

社会科学系の国際的な学術会議の開催支援に、日本の大手企業・学術関係の出版社などがきわめて消極的であることにはあらためて愕然とした。パーソナルな伝手がない場合には、絶望的といっていい。これでは、日本の社会科学の国際化はスローガン倒れに終わってしまい、韓国・中国・台湾等の後塵を拝することは必定である。

JNTOの寄附金・交付金交付制度は、課税対象の所得から寄附金分だけ控除を受けられる点がありがたいが、個人の寄付者にとっては、寄附金申込後、寄附金申込受理書を受け取ってから、寄附金を払い込む制度になっている。寄附金申込と寄附金の払い込みが同時に可能になっているとより簡便である。

会議開催後の感想

会議開催において心に残ったことがありましたらご教示下さい。

「参加者の数も、運営面を含め、大会の質も、これまでで最高の世界社会学会議だ」、「統一感があり、細部まで大会運営の神経が行き届いている」、「パシフィコ横浜とその周辺の雰囲気がいい」など、全体に好評だった。大きなトラブルもなかった。苦労したのは、レセプションの食事の提供である。開会式後と終了日前日と2回レセプションを開催したが、2,000人以上の参加者に同時に軽食を提供することは、予算・空間・時間、いずれの面でも困難をきわめ、「食べ物」が少ないなどの不満があった。

大会最終日に、横浜市と共催で、国際社会学会の会長・副会長と地元の高校生21名が2030年の世界と横浜をめぐって対話をする「高校生横浜みらい会議」を開催したが、参加した高校生にも、会長・副会長にも、大変好評だった。