<第26回目> 「第16回世界作業療法士連盟大会・第48回日本作業療法学会」を開催して 一般社団法人日本作業療法士協会 副会長 京都大学大学院医学研究科 教授 山根 寛 様

<第26回目>
「第16回世界作業療法士連盟大会・第48回日本作業療法学会」を開催して
一般社団法人日本作業療法士協会 副会長
京都大学大学院医学研究科 教授
山根 寛 様

国際会議主催者の生の声をお伝えする本コーナーの第26回目は、2014年(平成26年)6月に横浜市で開催された「第16回世界作業療法士連盟大会・第48回日本作業療法学会」で実行委員長を務められた京都大学大学院医学研究科 教授 山根 寛様よりコメントをいただきました。

会議概要

会議正式名称:第16回世界作業療法士連盟大会・第48回日本作業療法学会
開催期間:平成26年6月18日から6月21日まで(開会式:6月17日)
開催都市/会場:横浜市/パシフィコ横浜
参加者数:6,031名(外国からの参加者数1,460名)
ウェブサイト:http://www.wfot.org/wfot2014/jpn/index.html

立候補について

→日本として立候補するに至った経緯をご教示下さい。また、誘致から開催決定までのプロセスについても教えてください。


展示説明を受ける天皇、皇后両陛下

日本作業療法士協会は1966年に設立、1972年に世界作業療法士連盟(WFOT)という国際組織に加盟しました。設立時会員18名で始まった本会も、1999年には1万人、2007年には3万人を超え、現在は5万人になろうとしており、加盟国の中でも米国に次いで世界第2位の、アジアでは最大の規模に成長しました。この間、加盟各国の代表者により隔年で開催される国際会議「WFOT代表者会議」(約200名規模)を誘致・開催したことはありますが(2000年、札幌)、4年毎に行われる学術大会(数千人規模)はアジア地域では開催されたことがなかったため、本会の国際上の責務と、アジアから発信する必要性を強く感じたことから、2007年の本会理事会で招致活動を行うことを決定し、招致委員会を設置しました。

→立候補する上で工夫された点をご教示下さい。

「WFOT世界会議招致委員会」設置後、委員会は、2014年の第16回大会を招致すべく、日本開催の基本構想(会場、日程、予算規模、運営組織のあり方、国内学会との関係性、等々)を検討し、地元コンベンションビューロー、PCOの協力を得て入念なビッドペーパーを作成し、2008年9月にスロベニアで開催されたWFOT代表者会議でコンペティションに臨みました。オランダ、南アフリカなどの強力なライバルが同時に立候補を表明している中で、アジア初である日本開催の主要テーマとして、①災害対策と復興支援、②高齢化社会への対処、③コミュニティと作業療法などを強調しました。投票の結果、首尾よく招致を獲得するに至りました。

→「立候補で成功するための秘訣」は何でしょうか。


展示会場の様子

学術大会とはいえ、一つの国際大会を開くには、保健医療福祉における日本の作業療法の状況の背景となる日本の文化や経済、国政から観光資源に至るまで、日本という国そのものを理解してもらう必要があります。オリンピック開催の招致活動にも類似した、日本で開催可能ということや、日本で実施することが、いかに日本やアジア諸国をはじめ世界の作業療法の発展にとって有意義であるかといった広報活動が欠かせません。そのため、国や開催予定地の自治体や民間企業との連携、開催予定地を中心とした観光客誘致のビジターズ・ビューロー機能を含み、コンベンション誘致の実績を持つコンベンションビューローとの連携は欠かせません。

会議開催について

→会議を実際に開催するにあたって工夫した点をご教示下さい。


口述発表の様子

国際大会開催には、国内の学術大会とは異なる費用が発生します。特にWFOT大会は、作業療法の普及発展と教育研究の水準維持・改善・国際協力の推進を目的とした唯一の国際的な作業療法士の職能及び学術団体であるため、大会のテーマや内容に関して具体的な基準があり、WFOTと開催国との協同運営という強い連携の元に行われます。そのための事前の打ち合わせ会議、各国の作業療法士協会や関連学会との連携、バイリンガル費用、開発途上国の参加者への経費支援などもあり、実際に、JAOT(一般社団法人日本作業療法士協会)全国学会と比較すると同規模で3~4倍の時間と費用を要しました。さらに、今回の日本での開催は、東北地方での震災に対する国を挙げての支援の中での開催となり、寄付が予定の1/3程度しか見込めなかったこと、原子力発電所の震災被害による健康への風評が影響し、日本への渡航に対する許可が下りない国もあるなど、課題が多くありました。JNTO国際会議誘致・開催貢献賞受賞は国内への広報には大変有意義でしたが、JNTOの寄附金募集・交付金交付制度などについて十分理解できていなかったため、寄附金募集を効果的に活用しきれなかったことは残念でした。

会議開催後の感想

→会議開催において心に残ったことがありましたらご教示下さい。

学術的なこと以上に多くの課題がある国際大会でしたが、さまざまな工夫、約6万人の会員とその母体であるJAOTあげての取り組みにより、結果的には日本から約4,500名、海外から約1,400名、計5,900名を超える作業療法士を中心に、関連職種や一般参加者などを含めると総勢7,000名に及ぶ参加があり、作業療法を中心としたリハビリテーションに関する展望や臨床技術に関する学際的な研究成果を紹介し論議する機会となりました。

海外の参加者からは、一般参加者、各国代表を問わず、日本がどのような国かを知ることができ大変良かったという声が多くありました。大会そのものに関しての賛辞のほかに、「普通のお店でも、店員の対応が親切」「町がきれい、駅や道路にゴミが落ちていなくて驚いた」「夜、買い物やレストランに行っても安全、だれもが助けてくれた」「お店に忘れ物をしたけど、保管してあった」など日本の生活環境の良さや日本人のホスピタリティのすばらしさに対する賛辞が多く聞かれ、大会終了後も各国の作業療法士協会や作業療法士からお礼のメールが届きました。

このような国際大会の開催にあたっては、特に開発途上国への経費支援に関し、航空機をはじめとする交通や宿泊などに関する国や企業を含む支援体制が望まれます。