誘致・開催レポート

オンライン開催のケーススタディー (国際会議海外キーパーソン招請事業(Meet Japan))

31年の歴史において初のオンライン開催を決定

JNTOでは、国際会議の日本誘致を促進するため、開催地決定に影響力のある海外のキーパーソンを日本に招請する「国際会議海外キーパーソン招請事業(Meet Japan)」を1989年から毎年実施しています。
例年は、キーパーソンを日本へ招待し、会議施設や宿泊施設の視察、候補都市関係者との商談会や意見交換会などを通じて、日本の候補都市への理解を深めてもらう機会を設けていましたが、2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、初のオンライン開催になりました。ここでは、2021年1月26日(火)〜2月4日(木)に開催されたONLINE Meet Japanの新しい取り組みについてご紹介します。
オンライン開催のケーススタディー (国際会議海外キーパーソン招請事業(Meet Japan))

会議概要

会議正式名称 国際会議海外キーパーソン招請事業
開催期間 2021年1月26日(火)~2月4日(木)
開催都市/会場 --- / オンライン
参加者数

国際会議における新しい選択基準とは

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国際会議の開催地決定においては、会場の広さや会議室数といった仕様はもちろん大事な要素ですが、主催者が会議運営に対して安心感が持てること、参加者が多く集まるような観光魅力にあふれていること、地元企業からのスポンサーシップや学生との交流があること等、様々な付加価値があることが総合的に評価されて開催地が決定されます。

今までのMeet Japanでは、キーパーソンが実際に現地を視察し、候補都市の関係者と直接会い日本の魅力を直に感じてもらうことで、国際会議の招致へとつなげてきました。今回のオンライン開催においては、例年のように直接的な経験ができない中で、いかに開催都市の魅力や強みを伝えるかが課題となりました。

加えて、新型コロナウイルスの影響により、オンライン会議システムの効果的な導入や、感染症対策への取り組みといった新しい要素も海外の主催者から重要視されるようになってきました。今回は、MICE分野における日本のオンラインの取り組みをアピールできる機会と捉え、新しいMeet Japanを前向きに発信しました。

開催地としての魅力を幅広くアピールするために

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今回のMeet Japanでは世界7カ国18人 が、日本からは10都市が参加しました。
そのため時差を考慮し、北米向けに日本時間午前のセッションを、欧州・アジア向けに日本時間午後のセッションを設定しました。それぞれのセッションは次の3プログラムで構成されました。

  • ・オンラインセミナー
    世界の国際会議運営会社が加盟するIAPCO(国際PCO協会)の前会長であり、ICS(International Conference Services)社の社長のMathias Posch氏 、IAPCO現会長のOri Lahav氏によるセミナーを開催。両名共にオンラインでの参加となった本セミナーでは、日本で国際会議を開催した際の経験と開催にあたっての実践的なポイントが講義されました。
    具体的には、開催費用の確保、皇族方等のVIP の出席に伴う様々な対応について、日本の受け入れ側と協力して課題解決を図った事例や、台風の影響に伴い参加者のアクセス経路が大幅に変更になったにも関わらず、ローカルPCOや自治体等が協力をして迅速に情報提供を行い、結果として参加者数増による高収益な会議を開催できた国際会議の事例、また、参加者の満足度が向上し開催後の学会会員数の増加に寄与した国際会議の事例などが紹介されました。
    両氏からは、日本開催のメリットとして、開催都市や主催学会などから十分なバックアップが得られることが挙げられ、これらステークホルダーとPCOからなるプロジェクトチームとの密なコミュニケーションが国際会議成功のカギであったことが強調されました。
    最初のプログラムとしてケーススタディを紹介することで、その後のオンライン商談会への参加者が具体的な開催のイメージを持つことに資するセミナーとなりました。
    また、IAPCOが同時期に開催していたオンラインセミナー参加者向けに本セミナー動画を無料で解放し、150名超に向けて日本での国際会議開催へのアピールを図りました。

  • ・オンライン都市視察(オンラインFAM)
    参加者は仙台・横浜・大阪・福岡の 4都市の中から2つの都市を選び、オンライン上で都市視察に参加。各開催都市の会場の概要や会場までのアクセス、会場付近の観光名所やユニークベニューなどを、事前に参加都市とJNTOが中心になって作成した動画で視察しました。また、事前送付で各都市から参加者に贈られた折り紙や風呂敷などを使用し、各都市と参加者との交流を図るアクティビティが設けられました。

  • ・オンライン商談会
    海外のキーパーソンと候補都市がオンライン上で商談できる事前マッチング制のオンライン商談会を開催。また、それぞれの候補都市の紹介ページをオンライン上に設置し、資料や動画などの素材をダウンロードできるようにしました。商談会開始時間は、朝8時からと夕方16 時からに設定し、世界各地のキーパーソンが参加しやすいように工夫しました。

参加者インタビュー

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ここでは、オンラインMeet Japan参加した海外キーパーソンとオンラインFAM参加都市の皆さんの声をご紹介します。

  • 国際歯科研究学会 Leslie Zeck氏
    2027年に日本で開催予定の国際会議の会場候補地を確認するために参加しました。オンラインFAMは、目的地の概要を知るための良い機会でしたし、施設のフロアプランや写真だけを見るよりも全体の様子がよく分かりました。できればもっと他の都市のものも見てみたかったです。

    Meet Japanに参加したことで、開催候補都市に複数の交通手段があり、歴史や文化を楽しむことができ、また、非常に安全な都市であることがわかりました。また、今まで国際会議の施設があることを知らなかった都市について知ることもでき興味が広がりました。全体として、日本の新しい候補都市について学び、会場を見学することができ、素晴らしい経験となりました。特にリアルタイムで質問できるオンライン商談が有意義なものとなりました。

  • PATA(Pacific Asia Travel Association) Soon-Hwa Wong 氏
    イベントや会議の最新情報を得るため、またコンベンションビューローとのコネクションを作るために参加しました。日本は、アジア太平洋地域でトップクラスの会議会場の一つとして位置付けられています。日本独自の文化や料理は重要な差別化ポイントであり、他の場所では真似することができません。

    Meet Japanに参加したことで、コロナ禍における健康と安全面に対処するための設備が整っていることやハイブリッド会議のプラットフォームがすでに整っていることを知ることができ、大変有意義でした。また、空路に加えて陸路の公共交通機関も充実していることが分かりました。Meet Japanはオンライン開催ながら、全体的に非常に満足できるイベントだと感じました。

  • 福岡観光コンベンションビューロー
    コロナ禍で渡航制限がある中、これまでつながりのなかった国際会議の主催者と商談できる数少ないチャンスだと感じ参加しました。福岡市はアジアに近くアクセスが良く、日本の大都市の中では物価が比較的安価です。また、ハイブリッド会議ができる設備を整えたホテル、イベント施設も多いうえ、様々な価格帯の宿泊施設が計34,000室ほどあり、学生を含めた幅広い層の参加者に対応できます。最近では他都市に先駆け、MICEハイブリッド開催支援の助成金制度も始めており、こうした特徴が伝わるように、プレゼンテーション資料やオンラインFAM動画を準備しました。

    もっと多くの方に直接、オンラインFAM 動画を見ていただきたかったという想いもありますが、オンライン商談会では今後につながりそうな商談をすることができました。時差の関係で一日あたりの商談件数が限られていたことで、一件ごとの商談の印象が濃くなったようにも感じます。また会議主催者の方々は、市内の新型コロナウイルスの状況やコロナ禍での対策などを気にされている方が多いと感じたため、日本開催の安全性をアピールしていければと思います。

  • 仙台コンベンションビューロー
    オンラインでの誘致活動の経験値を増やしつつ、開催都市としての存在感を高めるために参加しました。当ビューローでは近年、参加者が会議会場で体験できる「茶道体験」「書道」「着物の着付け体験」「盆石体験」「箸づくり」などのプログラムの充実に取り組んでいます。これらは参加者同士の交流を促すだけでなく、地元のボランティアとの交流を通じ仙台・日本の魅力を伝える貴重なプログラムです。オンラインでこうした魅力をどれだけ伝えられるか不安もありましたが、JNTO、イベント運営会社、地元の皆さまのご協力により都市の魅力を詰め込んだ動画が完成しました。オールジャパンで作り上げていく過程は、コロナ禍で思うような誘致活動ができなかった中でとても有意義な作業でした。また地元の方々に私達の活動を知っていただくことにもつながりました。

    オンラインのクローズドな環境での商談は商談内容に双方が集中することができ、より充実したコミュニケーションが取れました。オンラインFAMでは参加バイヤーとアイスブレイクができ、その後のスムーズな商談につながったと思います。なお、オンライン商談で画面共有する資料は見やすいように修正し、画面を見ていても飽きないようにテンポよく話を続けることを意識しました。商談で使用するウェブシステムの操作方法の習得や、資料の準備はありますが、慣れればオンライン商談会は効率的であり、手ごたえを感じることができました。会場アクセスなどの一般的な質問の他、withコロナ、postコロナに対応した助成制度などの詳しい情報に興味を持ってくださる方が多い印象を受けました。

オンラインMeet Japanを終えて

移動制限がある中でのベストな開催方法として、今回はオンラインでの開催に踏み切りましたが、参加者によって異なる時差への対応、海外キーパーソンへのシステム面でのサポート、限られた設備と時間の中で分かりやすく都市を紹介する難しさなど、オンラインならではの課題が見つかりました。今回のMeet Japanは、オンラインとオフラインそれぞれの長所と短所を再度確認する機会となりました。

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