ケーススタディ

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日本発の技術を活用した、安全でインタラクティブなハイブリッド会議:UIA Associations Round Table Asia-Pacific 2021 in Tokyo

【会議名】 UIA Associations 9th Round Table Asia-Pacific
【開催日】 2021年10月21日~22日
【会場】コングレスクエア日本橋(東京)
   オンライン配信プラットフォームOnAIR
【参加人数】 オンサイト43人、オンライン72人

世界を代表する国際会議関連機関の一つであるUIA(Union of International Associations:国際団体連合)*のアジア太平洋地域会議「UIA Associations Round Table Asia-Pacific」が、2021年10月に東京で開催されました。日本初開催となった同会議は、UIAにとって初のハイブリッド開催です。

今回の会議では、国内外の学協会関係者や国際会議主催者のみならず、MICE関連事業者がリアルとオンラインで参加。スピーカーはドイツ、スイス、香港、オーストラリア、東京から登壇し、UIA本部と東京会場が進行を担いました。2日間のプログラムでは、国際組織・団体の国際社会での役割、ポストコロナにおけるブランディングやスポンサーシップといった運営上の課題、業界の最新動向などがテーマとして話し合われました。

今回のケーススタディでは、現地での取材と参加者へのインタビューをもとに、ハイブリッド会議開催の工夫についてご紹介します。

*UIA:1907年、ベルギー・ブリュッセルにおいて設立された非営利・非政府組織。74,000超の国際組織・団体等の調査・分析を行う。

最優先事項は安全・安心

開催までの数週間、日本における新型コロナウイルス感染症の感染者数は激減し、10月には新たな感染者数は1日平均100人を下回っていました。その中でも、会場では、安全・安心を最優先事項に掲げ、万全の感染症対策が施されていました。

東京都は2021年1月、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを抑えた安全・安心なMICEイベントの開催に向け、感染症専門家の監修に基づいて具体的な対策事項をまとめた「東京MICE開催のための安全・安心ガイドライン」(日英)を策定、会場ではガイドラインに沿って感染症対策が実施されました。スタッフは前日にリハーサルを行って準備を整え、参加者には来場に際して感染予防に関する事前アナウンスがなされました。コングレスバッグは手渡しを避けるため会場のテーブルにセットされ、ロゴ入りのマスクやアルコールスプレー等が配布されました。

会場入り口には、パナソニックの非接触で測温しながら手元と足元の除菌ができる「安心ゲート」が設置されました。また、空間をスキャンして混雑度を分析し、会場内の混雑状況を把握して行列や人混みを回避する「混雑度可視化SaaSシステム」が設置され、ホワイエに設置されたカメラで参加者の動きを追跡するデモンストレーションも行われました。

インタラクティブな交流

日本での開催準備が進んでいた7月、東京での緊急事態宣言が発令されました。ローカルホストである東京観光財団では、当日までの対応事項に必要な日数を逆算し、9月上旬にハイブリッド会議の開催が最終決定されました。

UIAのRound Tableは、例年、少人数の対面で深みのある議論を行ってきましたが、前年のソウル大会(オンライン開催)の各ブレイクアウトセッションではディスカッションがほとんど行われなかったことを踏まえ、東京観光財団はオンラインを交える形式ではディスカッションや参加者間の交流が難しいと判断。

そこで、当初検討していた、3つのブレイクアウトセッションに分けてディスカッションをする方式から、1つのルームのままで、ディスカッションではなく質疑応答を行うことに変更。オンラインの参加者はチャットボックスを通じて、リアル参加者は会場のマイクを通じて登壇者への質問をする方式を採用しました。こうしたことで、双方の参加者から多くの質問が寄せられ、またその回答を会場全体で共有することができました。

加えて、テレプレゼンスアバターロボットを手掛けるiPresence社(神戸)のChris Christophers氏が東京会場から登壇。ハイブリッド会議では、ステージのプレゼンターとオンライン参加者との一体感の演出が課題となっていますが、その解決策の1つとして、オンライン参加のスピーカーをアバターロボットでステージに登場させるデモを行いました。また、遠隔地にいる講演者は、テレプレゼンスアバターロボットを使用してホワイエを自由に動き回り、東京の現地参加者と交流を深めるなど、双方向のコミュニケーションを活性化する日本発の技術に会場は大いに賑わいました。

この他に、オンラインでの海外参加者のためにオンラインプラットフォーム上で4つのバーチャル東京ツアー、ネットワーキングラウンジ、日本文化体験(緑茶)などが用意されました。これらのコンテンツを用いて東京を多方面から紹介し、オンラインの参加者が将来日本を訪れたくなるようにデザインされていました。

リアルなネットワーキングの重要性

JNTOは、2日間のイベントに現地参加した参加者にインタビューを行いました。

コンベンションビューローからは、アフターコロナに向けたハイブリッド会議の手法を体験することや、今後の戦略策定にあたり市場動向について情報収集するために現地参加したという参加者が多く、ハイブリッド会議対応の必要性とダイレクトな交流を実現できる対面での交流への期待が窺えました。予想外に対面参加者が多く驚いた、新しいつながりができたという声も聞かれました。

4年に一度の国際会議を2023年に控える会議主催者側の先生からは「準備中の会議はハイブリッド開催の過去事例がなく、この会議を参考にしたいと考えた。また、iPresence社とは今までオンラインで商談をしていたが、今回の会議で直接会ってお話を聞き、アバターを見る機会を持てたことは、オンラインと比べて有意義だと感じた」と、実際に参加して得た点について触れました。

MICE関連事業会社からの参加者は「海外参加者とともに東京で会議に参加できなかったことは残念だが、アバターロボットなどのテクノロジーの活用により、遠隔地からの参加者とコミュニケーションがとれたことが非常によかった。対面での開催は、他の参加者と会話をする中で気づきを得られるなど、想定以上の可能性がある」とリアル開催への再認識を示しました。

次に、主催者であるUIAおよびローカルホストの東京観光財団によるコメントを紹介します。

UIAの渉外担当マネージャー
Clara Fernández López氏

このイベントは、私にとって初めてのハイブリッドイベントでしたが、素晴らしい経験となりました。アバターロボットを用いた登壇は楽しく、本当の意味でのハイブリッド体験ができました。
一方で、オンラインではプレゼンテーションを聞くことも、質問することもできますが、感情を感じることが難しいという点が最も大きな違いだと思います。また、オンラインでは偶然の人との出会いががない点は一番寂しいところです。
東京の街を訪れて実際に街を歩く機会があれば、文化や人々との出会いが素晴らしい経験になったに違いありません。

東京都観光財団

今回の会議は、リアル開催のみの場合よりも、現地参加者とオンライン参加者の双方に付加価値を提供し、訴求するようなプログラムやコンテンツをご用意することを意識しました。ウィズコロナの状況下で、ローカルホストとして国際会議の開催を経験したことで、実際に会議主催者の皆様が開催準備から当日の運営に至るまでに直面される課題や不安を理解することができたことが、大きな収穫でした。本会議を通じて、国際会議開催都市としての東京の魅力と共に、安全・安心な国際会議の開催事例を、国内外の参加者の皆様にご提案できたならば大変嬉しく思います。

ハイブリッド会議は少なくとも今後数年にわたって採用される会議形式と考えられますが、リアルとオンラインの双方の運営が必要であることから、求められる内容も多岐にわたります。その中で、主催者とコンベンションビューローの双方がハイブリッド会議のノウハウを蓄積することが必要です。今回の会議は、東京観光財団だけでなく、参加した日本のMICE関係者にとっても、ハイブリッド会議の経験を積む機会となりました。