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2024年08月26日 MICE市場トピックス(7-8月)

海外の複数市場について、JNTO海外事務所が収集したMICE関連の状況やトピックスをご紹介します。

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【英国市場】

・Associations World Congress
JNTOロンドン事務所は、6月9日(日)から11日(火)まで、オーストリアの人口第2の都市であるグラーツで開催されたAssociations World Congress 2024(以下、「AWC2024」という。)に参加した。この会議はAssociation of Association Executives(アソシエーション・エクゼクティブ協会)が主催し、107名の国際的なアソシエーション・エグゼクティブ(主にヨーロッパを拠点とするアソシエーション(学協会)の幹部)と、PCO(Professional Congress Organizer:会議運営会社)、企業、会場(施設等)、都市や各地のコンベンションビューロー等の代表者80名が一堂に会した。
本イベントでは、新たなメンバーシップの獲得に向けた戦略や国際的な協力体制の構築など、様々なテーマで行われる講演会の他、サプライヤーとの商談会・やネットワーキングイベントが行われた。JNTOはこの商談会で15のアソシエーションと商談を行った他、ネットワーキングイベントにおいても多くの参加者と情報交換を実施し、多くの人にとって会議未開催の場所である日本の、MICEデスティネーションとしての魅力を伝えることができた。これまでは欧州域内でのみ活動を行っていたアソシエーションも、会員数を増やすことを目的に、また活動の幅をよりグローバルに拡大していくため、新たな地域での活動や会議開催を視野に入れていた。そのデスティネーションとして具体的に日本を挙げるアソシエーションが多かったことが印象的だった。

・The Meeting Show 2024
JNTOロンドン事務所は、6月19日、20日にロンドン市内のExCel Londonで開催されたThe Meeting Show 2024(以下、「TMS」という)に出展した。Northstar Travel Groupが主催するこの展示会は、MICEの中でも特にM(Meetings)とI(Incentives)に焦点を当てており、出展者の大半は英国ベースであったものの、その他米国や欧州、アジアなど、世界各地のコンベンションビューローやホテル、航空会社、地域のDMC/DMOなども出展していた。
JNTOはシェル型のブースにデスクを一つ置いたシンプルな商談スペースだったが、Japanという文字に足を止めて立ち寄るバイヤーも多く、事前のアポイントと合わせて48の商談を行うことができた。M&Iが中心のTMSにおいて、JNTOは4つのアソシエーションと商談を行うことができ、そのうち2つは、日本での初めての会議開催を計画していたことから、デスティネーションとしての日本の注目度の高さを伺うことができた。また、インセンティブ旅行を取り扱っている企業も、その多くが今年、もしくは来年に日本へのインセンティブ旅行の具体的な計画・予定を持っており、2025年の大阪万博と組み合わせたインセンティブ旅行に興味を持っているバイヤーも多くみられ、MICE業界における日本の人気の高まりを感じることができた。

商談の様子
商談の様子
初日のレセプションの様子
初日のレセプションの様子
商談の様子
商談の様子

【インド市場】

デリー事務所は、2024年7月25日(木)~26日(金)の日程で開催されたインセンティブ商談会「MICE India and Luxury Travel (MILT) Congress」(以下、MILT)に参加した。本商談会はBtoBイベント企画大手のQnA Internationalが主催し、毎年インド国内の異なる都市で開催されている。今年はインドのラジャスタン州に位置し、ゴールデントライアングル(3大観光都市)の1つであるジャイプールという都市で行われ、150以上のバイヤーと40以上のセラーが参加し、2日間で合計3,000以上の商談が実施された。

デリー事務所としては今年で3回目の参加となり、インセンティブ旅行を取り扱う旅行会社はもちろんのこと、インセンティブ旅行を主催する企業とのネットワークを構築・拡大する目的で毎年参加をしている。バイヤーにはウェディングプランナー、イベントマネジメントカンパニー等も参加しており、普段アプローチできない相手と商談ができる貴重な機会となっている。商談方法に関しては事前アポイントメント制の1 on 1ミーティングではあるが、ウォークインの割合も多く、2日間を通して想定以上の商談を実施することができた。また、ステージイベントとして参加企業の役員がパネルディスカッションを行うパートもあり、毎年取り上げられるトピックでインド市場のインセンティブ旅行のトレンドを把握することができる。

それでは今年の商談会はどうだったのか。昨年度多く寄せられた質問が「新しいデスティネーションを探しているが、日本は行きやすいか」という内容であったのに対し、今年は商談相手から「日本を具体的に検討しているが、どこに行くのがよいか」、「日本に行く予定が既に決まっているが、どのようなサポートを受けられるのか」等、既にインセンティブ旅行の目的地として日本を検討している企業が格段に多くなった印象がある。また、多くの企業は既に東南アジア、中東といったショートホールは催行済であり、次のデスティネーションとして日本、韓国などの東アジア諸国を見始めている状況であった。昨年はロングホールの訪問先として欧州諸国の名前が日本の競合国として多く聞かれたが、昨今シェンゲンビザの取得に時間を要すためか、競合国として名前を聞く機会が少なかった。

上述の通り、着実に訪日インセンティブ旅行を検討・実施している企業が増加傾向にあることを実感する一方で、訪日インセンティブ旅行は「高い」というイメージを持たれていることも事実である。特に航空券の高騰がネックであるとの声を多く聞くが、インドから欧州に行く航空券代とほぼ変わらないことを説明すると、多くのバイヤーは驚くとともに納得し、日本をインセンティブ旅行の訪問先として検討する姿勢に変わることも多くあった。

毎年MILTに継続して参加し続けることにより顔なじみのバイヤーも徐々に増え、彼らからのアップデートや最新情報を得ることができるのもMILTに参加する意義の1つである。中には「つい最近、訪日インセンティブ旅行を実施した」という嬉しい報告も聞くことができるようになってきた。とはいえ、日本はまだまだ「新しいデスティネーション」であることに変わりはないため、MILTのような機会を活用しながら企業の担当者への直接の売り込みや情報提供を継続的に行い、インドからの訪日インセンティブ旅行を1件でも多く催行に繋げられるようプロモーションを徹底していく。
MILT公式サイト: https://miltcongress.com/

JNTOデスクの様子
JNTOデスクの様子
JNTOデスクの様子
JNTOデスクの様子

【中東市場】

コロナ禍前の中東地域市場における外国旅行といえば、ロングホールにおいては欧州各国が人気の旅行先であったが、コロナ禍後は新たな旅行先を模索する動きが活発となっており、その流れを受けて、中東地域市場における日本の人気が急速に高まりつつある。2024年1月~5月には約6万人が中東地域市場から訪日しており、2019年同期比で約1.4倍という回復・成長を遂げており、レジャー観光の分野においては訪日旅行の強いトレンドが数字にも表れ始めている。また、2024年5月に開催された中東地域で最大規模のB to B旅行博であるArabian Travel Market(ATM)2024では、会期中の4日間を通して延べ2,640人が日本ブースを訪れ、JNTOおよび14団体の共同出展者による商談件数は4,144件にのぼるなど、日本が旅行先として高い注目を集めていることを強く実感している。

また、このトレンドはMICEの分野においても同様の傾向が見られている。JNTOドバイ事務所にて日頃より行っている現地旅行会社との商談・ヒアリングの中でも、企業のインセンティブ旅行を中心に、日本が旅行先の候補に挙がり、また実際の手配に繋がっている話が聞かれるようになってきている。同時に、今後の中東地域市場からのMICE誘致の促進にあたっての課題も浮き彫りになってきた。

まずひとつは、直行便の就航有無などのアクセス利便性である。中東地域においては、コロナ禍以降、急速に日本への直行便が復便・増便等されており、2024年3月には日系航空会社で初の中東地域への直行便となる日本航空の羽田=ドーハ線が新規就航するなど、日本と中東地域を結ぶ路線は増加してきているが、例えば中東地域市場の中でもマーケット規模が最も大きいサウジアラビアにおいては、未だ直行便が就航しておらず、この点が大きな課題となっているようだ。実際に、サウジアラビアのMICE取扱旅行会社からは、民間企業や政府機関のインセンティブ旅行先として日本の提案をしているが、サウジアラビアからの直行便がなく乗り継ぎにより所要時間と費用が余計にかかってしまうため、最終的に日本に決定することが難しいという声が複数挙がっている。
そのほか、中東地域市場からのインセンティブ旅行への参加者には富裕層が含まれる場合もあるため、上位カテゴリーの客室を提供できる宿泊施設や、イスラム教徒向けに祈禱スペースや団体でのハラル対応の食事手配、顧客によっては必要に応じてアラビア語対応が可能な通訳・ガイドの手配等、当市場ならではのニーズに対するきめ細やかな対応が必要になってくる。

現地における日本の旅行先としての注目度の高まりという絶好の機会が訪れている今、航空アクセスの更なる拡大や日本側における中東富裕層に対する受入体制の整備・改善等を行っていくことで、日本への関心をさらに押し上げ、MICE分野の往来についても今後推進を図っていきたい。

【フィリピン市場】

フィリピンには、アウティング(Outing)と呼ばれる文化がある。いわゆる社員旅行・慰安旅行であり、チームの団結力強化と社員のモチベーション向上のため、福利厚生の一環として多くの企業が実施するインセンティブ旅行の一形態として定着している。イベントを大切にするフィリピン人にとってはクリスマスと並ぶ一大行事であり、アウティングの有無やその内容が離職率に影響するとも言われる程だ。行き先は、フィリピン国内のリゾートが選ばれることが多いが、コロナ禍を経て海外で行うケースも増えている。

アウティングは、みんなでワイワイ楽しむことを主目的としているため、旅先に求めるものはレジャーと大きく変わらず、日本の場合は「写真映え」「食」「買い物」が中心となる。訪問先としては、人気の高い東京・大阪の他、北海道や名古屋、岐阜等が選択されており、どの行程にもテーマパークやアウトレットがよく組み込まれている。宿泊先のホテルでガラディナーを行うことも多く、音楽好きのフィリピン人には一緒に踊って楽しめるようなパフォーマンスが好評だ。最近では、東京と大阪は既に訪問したので他に良いところはないかとの要望も少しずつ出始めている一方、旅行会社からは数十名~数百名規模の団体について、特に地方における宿泊先や食事場所(いくつかに分かれるのではなく、全員で同じ場所で食事がしたい)の手配に苦労するとの声も聞かれており、受け入れ側とのマッチングが求められている。

なお、最近の旅行先のトレンドとしては、旅行代金が安価なタイやベトナムの人気が高まっており、特にベトナムは昨年12月のマニラ=ダナン便の新規就航や航空会社の積極的なプロモーション、SNSでの口コミ拡散により注目を集めている。

北海道におけるインセンティブ旅行の様子
北海道におけるインセンティブ旅行の様子
福岡におけるインセンティブ旅行の様子
福岡におけるインセンティブ旅行の様子

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