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2024年12月23日 MICE市場トピックス(12月)

海外の複数市場について、JNTO海外事務所が収集したMICE関連の状況やトピックスをご紹介します。

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【スペイン市場】

 JNTOマドリード事務所は11月18日(月)にスペイン・バルセロナにおいて「インセンティブ業界ネットワーキングセミナー事業」を開催した。この事業は、毎年バルセロナで実施される世界最大級のMICE旅行博「IBTM World」に合わせて開催したものである。
 当日は、IBTM Worldのジャパンブースに出展する共同出展者のうち13団体と、スペインのインセンティブ専門旅行会社37社より合計66名が参加した。セミナーには同年10月に実施されたJNTOインセンティブファムトリップ(訪問地:東京・横浜・名古屋・犬山・関)への参加者が登壇し、パネルディスカッション形式で、訪日インセンティブ旅行の可能性や課題について発表しあった。登壇者からは全体的に優れた施設がそろっている日本を評価する声があがった一方で、インセンティブ旅行とレジャー旅行との違いとして、添乗するガイドによる訪問先の歴史的価値などの説明が参加者の知識向上=WOW効果に直結するという点や、行程にストーリー性をもたせガイドにもその認識を持ってもらうことが非常に大切である、との声や、行程や体験に柔軟に対応できる受入側の体制確保を求める声があがった。
 イベント全体への評価アンケートでは、75.8%が「満足した」と回答した。また参加者からの声としては「業界関係者から見た日本の渡航先としての存在感は明らかに大きくなっている」との声があった一方で、2025年に日本へのインセンティブ旅行を計画している旅行会社は約45.5%にとどまる結果となっており、現地旅行会社が求めていることとして「DMCとつながる機会の増加」や「より多くの訪日インセンティブ情報の提供」、「DMC側の柔軟性とスピードの向上」という声が上がった。
 このうち、「DMC側の柔軟性とスピードの向上」ついて分析してみたい。アンケートではスペインからのインセンティブ旅行の手配件数が最も多い時期は「9月」であり、「7月」・「8月」が最も少ないことが明らかになった。背景として、7、8月のスペインはバカンスシーズンに入ることからバカンス明けの9月に手配が集中しているとみられる。一方で、9月は訪日レジャー観光においても人気にシーズンである中、初めて訪日する参加者も多いインセンティブ旅行においても行き先がゴールデンルートに偏ってしまう傾向にある。結果的にDMCの対応が需要に追いついていないことが、「柔軟性とスピード感がない」との評価につながっているのではないかと考えられる。
 一方、前段のパネルディスカッションでは八事山興正寺を訪れた際の体験として、「日本らしいエキゾチックさがある一方で、過度に観光地化されていないこのような静かな場所こそが日常の業務を離れ、思考を巡らせるきっかけとなり、とても素晴らしかった」との評価があったことから、王道観光地がそろうゴールデンルートに限らずとも、インセンティブ旅行で高い満足度を確保できることがわかった。
 さらに、スペイン市場は日本への直行便が週3便と供給量が少ないことから、他国と比較してオンシーズンの日本行き航空券の価格が比較的高くなる傾向にあるため、オフシーズンの訪日インセンティブ旅行の訴求は9月と比較して価格面での優位性をバイヤー側に示すことも可能だと考えられる。
 こうしたことから、レジャーの観光客が比較的少ない時期のインセンティブ旅行の誘致や、主要観光地を離れたコンテンツの訴求に力を入れることが、受入側の柔軟性の確保と、インセンティブ旅行の主催者側の満足度を両立できる方法の一つではないかと考えられる。
 こうした現状を踏まえ、今後もJNTOマドリード事務所では、現地のインセンティブ旅行関係者に対する地域コンテンツの情報発信やセミナーの実施に努めていきたい。

ファムトリップ参加者による パネルディスカッションの様子1
ファムトリップ参加者による パネルディスカッションの様子1
ファムトリップ参加者による パネルディスカッションの様子2
ファムトリップ参加者による パネルディスカッションの様子2
ネットワーキングの様子
ネットワーキングの様子

【米国市場】

 JNTOロサンゼルス事務所は、10月27日(日)~29日(火)にロードアイランド州ニューポートで開催された「Smartmeetings Luxury Experience 2024」に出席した。本イベントは米国を拠点とする著名なMICEメディア会社であるSmartmeetings社が主催するイベントで、事前マッチング制の商談セッションの他、ネットワーキング・イベント、エデュケーショナル・セッション等が行われた。商談セッションでは、2日間で25件の商談(各10分間)が行われ、88社のサプライヤーと約71社のバイヤーが参加した。
 今回のイベントは、ラグジュアリーな体験に焦点を当てており、参加したプランナーは日本を含む米国外のデスティネーションへの関心が高く、参加したプランナーの20%近くがすでにアジア太平洋地域での企業ミーティングやインセンティブ旅行を計画しており、有望な案件において将来的な候補地として日本を検討していることが分かった。
 プランナーからは、「ラグジュアリーで文化的な体験プログラムへの需要が高まっている」という声があり、屋形船クルーズ、寿司作り体験等の体験についての情報提供を行ったほか、地方誘客促進やオーバーツーリズム対策を念頭に、幅広い地域についての情報も併せて提供した。また、企業ミーティングのトレンドとして、ビジネスとレジャーを組み合わせた“bleisure”への関心が高まっており、バリアフリーや持続可能性を重視する傾向もみられた。
 ユニークで質の高いイベントへの需要が高まる中で、日本の2025年以降のシーズンに向けて、企業ミーティングやインセンティブ旅行の予約増加に手応えを感じられる商談となった。

オープニングセッションの様子
オープニングセッションの様子
商談の様子
商談の様子

【韓国市場】

 JNTOソウル事務所は11月28日(木)に今年で第2回目となる「2024JNTOインセンティブ旅行セミナー」をソウルプレジデントホテルにて主催した。韓国のインセンティブ旅行を実施する企業/団体7社、旅行エージェント32社の合計 39社から53人が参加した。
 当日は主催挨拶と訪日インセンティブ旅行の紹介、ランチレセプションを通じたネットワーキングの後、講演を実施。講演では、まず在韓国日本国大使館とJNTOソウル事務所によるインセンティブ旅行の観点から見た2025大阪・関西万博のPRを行い、大使館の関西万博担当者による概要説明及びソウル事務所によるインセンティブ旅行のコンテンツとしての活用提案を発表した。次に、静岡県ソウル事務所による同県内のMICEインフラ紹介を行い、最後にインセンティブ旅行を企画するバイヤー(旅行エージェント)が、東京都内のスポット4か所について、その設立にちなんだstory tellingとアピールポイント、例えば「韓国人に馴染みがある『おにぎり』が新感覚スイーツ(ケーキ)として販売」など既成概念を超える商品開発事例を紹介し、トレンドに合わせてインセンティブ旅行の目的地を選定するアイデアを紹介した。
 本セミナーの総合評価について、「満足した」48件、「どちらかといえば満足した」4件で、「満足」の割合は98.1%。講演について「大阪・関西万博の紹介はインセンティブ旅行商品プログラミングに大きく役立った」との意見と、「大阪・関西万博のインセンティブ客への支援があればよい」との意見があった。また、「静岡県のインセンティブ旅行インフラの必要な情報はすべて網羅され、大いに役立った」とのこと。インセンティブ旅行を実施するバイヤーの講演は、「視察ツアーのコンテンツが確実で、視察対象業者ごとに重要コンテンツを設定し、ベンチマーキングを誘導しているという点から大いにインセンティブ旅行企画に活用できる講演内容であった」との評価であった。
 事業を通じて、大阪・関西万博におけるインセンティブ旅行の意義、訪日インセンティブ旅行準備のためのピンポイントな情報を伝えることの重要さを実感。地域選定や講演コンテンツ選定についても、今後の方向性に参考可能なバイヤー意見を聞くことができた。

会場受付の様子
会場受付の様子
JNTOソウル事務所長挨拶の様子
JNTOソウル事務所長挨拶の様子
セミナー講演の様子
セミナー講演の様子

【インドネシア市場】

 JNTOジャカルタ事務所が7月23日(火)に開催した第1回「JNTO ジャカルタ オンライン MICE セミナー2024」では、インセンティブ旅行に関心を持つ旅行会社関係者130人以上が参加した。登壇した公益財団法人仙台観光国際協会及び合同会社ユー・エス・ジェイは、それぞれの取り組みを紹介いただき、参加者より、団体受入環境や季節ごとの魅力的なコンテンツについて、多くの質問が寄せられた。
 また、10月15日(火)の第2回セミナーでは、150人以上が参加し、公益財団法人ちば国際コンベンションビューロー及び東海旅客鉄道株式会社より、地域独自のコンテンツやユニークな体験等を提案いただいた。参加者より、移動時間の短縮や特別なアクティビティが顧客の目的地選定において決定的な要因となることが多いため、旅行商品を企画する旅行会社にとって果物狩り等の地域ならではのプログラムや車両貸切特別プログラム等の情報は非常に有益である、との評価を得た。
 インドネシア市場におけるインセンティブ旅行需要は全般的に年々高まってきている印象である。訪日者数も本年度10月の時点で2019年度同月に比べ2割増しとなっており、在インドネシアのアウトバウンド事業者からの訪日に関する問い合わせや商談の件数は11月時点で前年より約2割増え、内容は旅行の催行やJNTOからの誘致の支援メニューについてや、バス・ハイヤー会社や指定アクティビティ(ゴルフやサイクリング等)を手配できるランドオペレーターの紹介依頼、将来造成するインセンティブ旅行の行き先(東京と北海道以外のおすすめ地)の相談、自治体・各観光局の紹介依頼等、多岐にわたっている。インドネシアのインセンティブ旅行は観光の要素が強く、行程もゴールデンルートを巡るものが多かったところ、最近は地方都市への関心が高まってきており、インセンティブ旅行を受け入れるための食事や宿泊施設の整備状況、その土地で体験できる四季折々の観光資源についての問い合わせが増えてきている。
 ジャカルタ事務所は、今後もインセンティブ旅行のプロモーションと在インドネシア事業者と訪日受入施設との関係性構築のサポート活動に一層努めていきたい。

第2回セミナーでのジャカルタ事務所長 による開会の挨拶
第2回セミナーでのジャカルタ事務所長 による開会の挨拶

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