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2025年02月25日 MICE市場トピックス(1-2月)

海外の複数市場について、JNTO海外事務所が収集したMICE関連の状況やトピックスをご紹介します。

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【米国市場】

 JNTOロサンゼルス事務所は、12月8日(日)~10日(火)にアリゾナ州フェニックスで開催されたSmartmeetings Incentive Experience 2024に出展した。本イベントは米国を拠点とするMICEメディア会社であるSmartmeetings社が主催するイベントで、事前マッチング制の商談セッション(2日間で25件)の他、ネットワーキングイベント、エデュケーショナル・セッション等が行われ、サプライヤー75社とバイヤー64社が参加した。
 本イベントでは、インセンティブ旅行の体験プログラムにスポットが当てられ、米国外へのインセンティブ旅行に携わる質の高いプランナーが集まった。商談では「2025年に800人の参加者を日本に送る予定である」「2025年1月に東京と京都で現地視察と7日間のインセンティブ旅行を実施する」といったプランナーもおり、2025年/2026年に向けた新たなイベントの提案依頼が複数あった。
 基調講演では、インセンティブ旅行業界の国際団体であるSITE(Society for Incentive Travel Excellence)のCEOアネット・グレッグ氏が登壇し、2024年の調査レポート「Incentive Travel Index」の結果から、2025年はインセンティブ旅行の消費額増や回数増などが見込まれるものの、国際情勢不安による影響で、企業はより慎重な行動をとっており、2026年の見通しは不透明であると述べた。また、トレンドとしては、予算削減が旅行プログラムに影響し、チームビルディングやグループでの活動が減少する中、回答者の90%が重要視する文化体験プログラムは維持されるとみている。また、2030年までに労働人口の58%を占めることになるミレニアル世代とZ世代では、本格的でユニークな体験の需要が高い一方、プランナーは依然として所要時間や旅費に敏感であり、コスト削減の観点から片道8時間以内の旅行先が好まれている。加えて、安全性の高いデスティネーションが特に重視される傾向にあるとのことであった。
 この調査結果から、日本は米国市場にとって長距離旅行先ではあるものの、豊かな文化、安全性への高い評価、環境に優しい取組みや慣習といった特徴を生かすことで、インセンティブ旅行先としての魅力を強化することができると考えられる。

商談の様子
商談の様子
アネット・グレッグ氏による基調講演の様子
アネット・グレッグ氏による基調講演の様子

【香港市場】

 観光庁のインバウンド消費動向調査の2024年10~12月期【1次速報】によると、一般観光の訪日旅行者のうち91.9%が訪日経験2回以上のリピーターで、さらには10回以上の訪日経験が36.8%を占める香港市場において、インセンティブ旅行においても行き先として日本が検討されることは多い。インセンティブ旅行取り扱い旅行会社へのヒアリングによると、香港市場における日本行きのインセンティブ旅行の特徴や傾向は次の通りである。
・企業業種:保険会社が多い。そのほかは銀行、電機メーカー関係、マーケティング会社等
・人数規模: 30人から250人程度の規模が多い。保険会社は1,000人以上の規模もある。
・日数:2泊3日~3泊4日程度が大半
・主な訪問地域:東京、大阪、福岡、北海道
・日程内容:主要観光地や、アウトレットなどのショッピングスポット訪問、ウェルカムディナー・ガラディナー(どちらかもしくは両方)の実施、剣道や太鼓体験といったチームビルディングアクティビティ等が含まれる。
・問い合わせ及び決定時期:旅行会社への企業からのインセンティブ旅行の問い合わせ時期は出発の8~6ヶ月前が多く、行き先の決定は2~6ヶ月前が多い。

 日本以外の人気の目的地はタイ、中国、ヨーロッパ、オーストラリアである。共通した人気の理由は、食やパーティー会場(ホテル、ユニークベニュー等)が魅力的であることのほか、国・地域ごとに次の理由が加わる。タイ、中国は価格が安く、サービスのクオリティが高い、マッサージやスパ等の体験ができる。オーストラリア、ヨーロッパは自然やアウトドアアクティビティ、歴史的な場所等が魅力的である。
 他国・地域と比較検討される場合に重要になってくるのは、①参加者(特に250人以上)の収容ができる宿泊施設やガラディナー等のパーティー会場(ホテル、ユニークベニュー等)有無、②支援内容、③目的地までの交通の便の良さ、④食、⑤各種体験(例、ものづくり体験、酒造見学、ハイキング、お祭り等)であり、特に①と②ついては旅行会社からも問い合わせが多い内容であり、詳細な情報提供が求められている。②の支援内容については、ア)来訪者に対して特別感を示すことにつながる、ギブアウェイ提供(例:トートバッグ、スーツケースタグ、人気のキャラクターものが入ったグッズ等)、空港でのウェルカムメッセージやセレモニー、ホテルの客室に配置するサプライズギフト等の提供や、イ)インセンティブ旅行実施に係る費用支援(交通・宿泊費の補助制度等)である。

 香港事務所では、香港・マカオの旅行会社や航空会社約340社へ月次でMICEニュースレターを配信しているが、アクセスが多いコンテンツは、各コンベンションビューローのサポート情報(補助金やギブアウェイ、パフォーマンス、体験等)や手配に直接関係するチャーターバスの料金体系、新しい宿泊施設・ベニュー、文化体験、食の情報となっている。香港発の訪日インセンティブ旅行の誘致に向けて、ぜひ引き続き旅行会社に関心の高いコンテンツについて情報提供をお願いしたい。

【英国市場】

 JNTOロンドン事務所は、12月12日(木)から13日(金)にかけてイングランド北部の町ダーリントンにあるロッククリフホールで開催された2024 C&IT Incentives Retreatに参加した。このイベントには、インセンティブ旅行に関連するエージェント27社が参加しており、商談やネットワーキングイベントを通じて、インセンティブ旅行のデスティネーションとしての日本の魅力を紹介した。商談を行った16件のうち、半数ほどが、今後2年以内に日本へのインセンティブ旅行を行うことに強い関心を持っていた。残りのエージェントもかなり積極的に日本の情報を収集しており、インセンティブ旅行のデスティネーションとしての日本の想起率はかなり向上していると感じられた。具体的には、旅行先としてどういった都市があるか、リゾートホテル、高級ホテルについて尋ねられたほか、交通事情など含めた日本の基本的な情報が求められた。
 インセンティブ旅行の内容としては、インタラクティブなワークショップやチームビルディング、より多くの自由時間を含めることなどが求められるほか、国際的ブランドの4つ星及び5つ星ホテルでの滞在が好まれる傾向がある。また、本イベントの講演会では、欧州を拠点とする企業は二酸化炭素排出量の削減などサステナビリティへの関心が高いことから、欧州域内でのインセンティブ旅行が増加する可能性があると示された。欧州の企業の関心がサステナビリティに集まる中、日本は環境に配慮した移動手段やプログラムの強化が期待されている。

セッションの様子
セッションの様子
商談の様子
商談の様子

【台湾市場】

 台湾からの訪日人数は昨年過去最高を記録し、個人旅行を中心に好調な状況が続く一方、団体旅行はツアー価格高騰等を背景に回復が遅れている。その状況下で旅行会社が期待を寄せるのがインセンティブ旅行である。催行を前提として手配を行える点、コストの制限が比較的緩やかな点は、一般的な募集型団体旅行よりも取り組みやすく、企業旅行重視の方針にシフトする旅行会社も増えている。
 台湾では社員旅行や報奨旅行など企業主催の旅行が数多く実施され、規模は数名から数千名まで幅広く、行き先も世界各国多岐に渡る。社員の家族が同行するケースも珍しくなく、学校休暇期間(7月※~8月頃と 1月~2月頃)は催行が増えるのも特徴である。企業は優秀人材の獲得・雇用維持、社員の士気向上等の狙いから自社の福利厚生とインセンティブ施策として積極的に外部発信を行い、社員もまたSNS等で発信し自身のプレゼンス向上に活用している。
 直近で実施された日本を含む近距離圏の企業旅行を下表にまとめているが、コロナ後は地方部を目的地とする行程が多く、社員がプライベートで訪れていない地域を検討したい、という企業担当者の思考が働いているものと推測される。特に日本に関しては、コロナ後の急激なブームにより、日本旅行の特別感や新鮮味、インセンティブ旅行で重要な”ご褒美”のイメージが薄れているという声も一部聞かれるため、今後旅行会社において企業旅行の行程が検討される際には、地域や訪問先、コンテンツの独自性や新規性、希少性等が重視される可能性が高く、セールス活動において意識する必要がある。
※旧暦7月にあたる期間を除く。

【香港市場】

【アジア市場】

 JNTOでは2024年度、企業や団体のインセンティブ旅行に特化した商談会を台北・ホーチミン・クアラルンプール・バンコク・マニラの5都市で実施した。昨年度に引き続き完全対面形式で実施し、各都市では日本から参加したセラーと現地のバイヤーが熱心に商談を行った。
 5都市の商談会で参加したセラーは合計108団体であり、内訳は自治体が39団体(36%)、ホテルなどの宿泊施設が34団体(31%)、ランドオペレーター/DMCが17団体(16%)、その他観光施設等が18団体(17%)であったが、どの商談会でも募集数を上回る数のセラーから応募があり、インセンティブ市場の需要の高まりが感じられた。バイヤーは5都市で延べ124団体が参加した。
 参加したセラーからは「日本マーケットへの意欲が高いバイヤ―と商談できた」「1日で数社と商談ができるので効率的」「初めて参加したが予想よりバイヤーのレベルが高かった」などの声が聞かれ、バイヤーからは「地方コンベンションビューローの支援内容が知れてよかった」「様々な業種のセラーと商談ができて有意義だった」「新たなホテルやランドオペレーターと繋がれた」などの声が聞かれた。
 インセンティブ旅行は一般観光と違い、社員のモチベーションアップに繋がるチームアクティビティやガラディナーなどが重要であり、インセンティブならではの特別感を感じられる工夫やテーラーメイドなカスタマイズが必要である。それらのコンテンツはインターネット上での情報発信などではなかなか伝わりづらいため、バイヤーに直接PRができるこのインセンティブ旅行商談会を有効に活用していただきたい。2025年度は開催都市を8都市に増やして実施予定である。
(参考:2025年度のインセンティブ旅行商談会開催都市)https://www.jnto.go.jp/news/nf20250117_2.pdf

JNTO海外事務所長による挨拶 (マニラ)
JNTO海外事務所長による挨拶 (マニラ)
商談会の様子(バンコク)
商談会の様子(バンコク)

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