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2025年07月02日 MICE市場トピックス
海外の複数市場について、JNTO海外事務所が収集したMICE関連の状況やトピックスをご紹介します。
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【ベトナム市場】
2024年もベトナムでは政府機関や民間企業によるインセンティブ旅行が非常に活発であった。JNTOでは、旅行会社を対象に訪日インセンティブ旅行団体に対してギブアウェイ提供等の支援を行っている。今回はこのインセンティブ旅行支援申請を行った旅行会社を対象としたアンケート情報をもとに、ベトナムにおける訪日旅行市場の”いま”をお伝えする。
まず、申請件数が多かった業界は、「電機・機械・エネルギー関連」、「物流・小売・商社等」、「建設・不動産」、「金融・保険」であった。コロナ直後は、コロナ禍に業績が好調であった金融、保険、IT、サービス業が活発であったが、昨年はガスや電気などのエネルギー関連企業の訪日インセンティブ団体が目立った。この背景には、ベトナム政府が打ち出した2030年まで再生可能エネルギーやLNGによる発電の開発に注力する方針「第8次国家電力開発基本計画(PDP8)」も影響していると考える。また、小売りや金融・保険業界は自社の従業員向けではなく、クライアントや販売代理店向けのインセンティブ旅行が多かった。ベトナムの製造業はGDPの約25%を占める重要な産業であるが、コロナ前は訪日インセンティブ団体が多くあったものの、近年の米中貿易摩擦やウクライナ情勢のような国際情勢や深刻な電力不足等に大きな影響を受け、長く低迷しており、訪日インセンティブ団体の数も未だに回復していない状況である。
訪日インセンティブ旅行の催行時期は、レジャーと同様に3~4月の桜シーズン、10~12月の紅葉シーズンに集中する傾向が見られた。また、12月~2月は企業の決算時期とテト(旧正月)前に重なることから、訪日に限らず、海外インセンティブ旅行は少ないのが特徴である。行先別では、ゴールデンルート(東京-富士山-京都-大阪)が圧倒的に多く、次いで東京近郊(東京+富士山)となり、こちらもレジャー同様にゴールデンルート一強を反映するかたちとなった。企業訪問等のテクニカルビジットはほとんどの団体で組み込まれていなかったものの、全体の3分の1においてガラディナーが開催されており、ベトナムのインセンティブ旅行団体の特徴が大きく表れた結果となった。ベトナムの団体・企業は、インセンティブ旅行時のチームビルディングを重視する傾向にあることから、ベトナムからのインセンティブ旅行団体を誘致するうえでは、「ガラディナーの受入可否」と「当日の柔軟な対応(時間延長等)」が重要になる。宿泊施設や食事施設においては、一般的な会食プランとは別に、価格帯に合わせた時間延長プランやステージパフォーマンス手配プランを含めたインセンティブ団体向けの特別会食パッケージを複数用意されることを推奨したい。グループサイズは、20~59名の小中規模団体が半数以上を占めている。一方で、100名以上の大型団体もあったが、20~30名程度の小グループに分けて、複数日で催行する企業が多かった。このように、小中規模単位で催行されることがトレンドとなっている。
滞在日数は、4泊5日が最も多く、一般的なゴールデンルートのレジャー商品平均日数(5泊6日)よりも1日短い旅程になる傾向があり、一人当たりの旅行費用(往復航空券含む)は、「1500~1999ドル(約21万円~約28万円)」が最多であった。一般的なゴールデンルート商品(5泊6日)の価格は約13万円~20万円であることを踏まえると、インセンティブ団体の方が約1.5倍単価が高いことが分かる。業界別で見てみると、「建設・不動産」が平均2949ドル(約36万円)と最も高く、次いで「物流・小売・商社等」平均1930ドル(約28万円)、「電機・機械・エネルギー関連」平均1918ドル(約27万円)、「金融・保険」平均1323ドル(約19万円)の順となった。最も高単価のインセンティブ団体は不動産会社が上級顧客向けに実施したもので、往復JALビジネスクラス利用や帝国ホテル東京に5連泊するもので、一人当たりの旅費は4648ドル(約67万円)であった。
受注エリア別では、二大都市のハノイとホーチミンが多いものの、南北で差はほとんどなかった。他方、第三都市のダナンやその他地方都市からの申請も複数あった。例えば、ベトナム南部にある工業団地と多数の外資企業の進出でベトナム国内で一人当たりの所得が最も高いビンズオン省(約829万ドン≒約4万6000円)や3番目に高いドンナイ省(約657万ドン≒約3万6000円)の旅行会社からも申請があった。また、レジャーとは異なり、大手旅行会社のみならず、中小旅行会社からの申請も多いことから、会社規模やエリアに限らず、各社が地場のお得意様企業を抱えていることも、ベトナムのインセンティブ旅行市場の強みであり、特徴だと言える。ベトナムには、他市場にあるようなMICEに特化した旅行会社はなく、訪日担当者がレジャーとインセンティブ旅行担当を兼ねているところが大半であることから、効率的にセールスすることが可能だ。是非、ベトナムで旅行会社セールスをする際は、レジャーとMICE両方の情報をお持ちいただくことをお勧めする。
現在、ベトナムでは全国63省・市ある行政区を約半数の34省・市にする大規模な行政再編が行われている。これに伴い、行政機関・団体からのインセンティブ旅行件数が大幅に減少しており、多くの旅行会社がインセンティブ市場への影響を嘆いている。一方で、民間企業による訪日インセンティブ旅行は、4月の桜シーズンを中心に数を伸ばしており、5月末時点でJNTO ハノイ事務所には昨年度の半数以上の申請が既に届いている。行政再編が落ち着くであろう秋以降には、行政機関・団体のインセンティブ団体も戻ってくると考えられており、旅行会社も期待を寄せているところが多い。
ベトナムの2024年GDP成長率は、前年比7.09%と政府目標6.5~7.0%を達成した。また、世界銀行発表の最新レポートによると、2025年は世界的な貿易政策の不確実性や経済成長の減速などが影響して、5.8%に減少するとしたが、2026年は6.1%、2027年は6.4%へと伸長するとされており、引き続き東南アジアの中でも高い成長率を維持する国の1つと予測されている。このような高い経済成長を背景に、著しく発展、大きな伸びしろを秘めるベトナム訪日インセンティブ旅行市場に、より多くの観光関係者が関心を持たれることに期待したい。
2024年度インセンティブ旅行支援団体・一人当たりの旅行費用割合(JNTO ハノイ事務所)
【フィリピン市場】
観光庁が実施しているインバウンド消費動向調査の結果によると、2024年の訪日フィリピン人のうち、訪日目的を「インセンティブツアー」と回答した人が3.2%だった。平均泊数は、観光・レジャー目的の7.6泊に対し、インセンティブツアー目的は4.3泊と短いが、1人1回旅行当たりの消費単価(パッケージツアー参加費内訳含む)は観光・レジャー目的の205,547円を上回る251,841円であった。インセンティブツアー目的のサンプル数自体は少ないためあくまで参考値であるが、一般的にインセンティブ旅行の消費額がレジャーよりも高い傾向にあるといわれていることと合致しているといえる。
5月末までにJNTOマニラ事務所に寄せられた今年度のインセンティブツアーの支援申請から見える傾向としては、渡航先は大阪近郊(京都・奈良含む)が半分以上を占めており、そのうち行程に大阪・関西万博の視察が含まれているのは2件(いずれも日系企業)だった。日数は概ね4~5日で、人数は22~185名と様々だが平均すると75名、業種は金融・保険、製薬、自動車関連等となっている。各地域における主な訪問先は下記の通りで、代表的な写真撮影スポットや体験施設、テーマパーク、買い物が多く盛り込まれている。フィリピンの企業・団体にとってインセンティブツアーとは、社員間の絆を深め、雇用維持を図る大切な機会であり、これらの体験を通して「全員で共通の思い出を作り、帰属意識を高め、チームビルディングに資すること」が重要な目的となる。
北海道:札幌市時計台、白い恋人パーク、狸小路商店街、すすきの、藻岩山ロープウェイ、小樽、登別地獄谷、登別伊達時代村、ウポポイ、有珠山ロープウェイ、サイロ展望台、三井アウトレットパーク札幌北広島
東京近郊:着物着付け体験、浅草、東京スカイツリー、チームラボプラネッツ、渋谷スクランブル交差点、SHIBUYA SKY、河口湖、芦ノ湖、箱根ロープウェイ
大阪近郊:大阪・関西万博、USJ、大阪城、梅田スカイビル、心斎橋筋商店街、難波八坂神社、りんくうアウトレット、金閣寺、嵐山、伏見稲荷大社、三十三間堂、奈良公園、東大寺
出典:https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html
観光庁 インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査) 2024年年間 集計表
大阪におけるインセンティブツアーの様子
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