お知らせ
2026年02月03日 MICE市場トピックス
海外の複数市場について、JNTO海外事務所が収集したMICE関連の状況やトピックスをご紹介します。
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【イタリア市場】
2025年1月から12月までのイタリアからの訪日客数は30万人を超え、2024年の実績(約23万人)を大きく上回り、高い訪日需要が続いている。しかしながらこれまでのMICE商談会等を通して、インセンティブ旅行先としての日本の認知はまださほど高くはなく、今後さらに上げていく必要性を感じていることから、ローマ事務所では12月3日(水)にミラノで小規模のMICEセミナーを実施した。
本セミナーでは、インセンティブ旅行を扱う旅行会社やインセンティブハウスから16名が参加し、基本的な一般観光情報に加え、インセンティブ旅行のモデルルート、体験情報、複数のユニークベニューの紹介を行った。初訪日が大半を占めるイタリア市場では、ゴールデンルートへの関心は強いものの、最近では自然豊かな地域や同市場においてまだメジャーでない地域への訪問意欲も高いことから、関西地方、中国地方、四国地方などの紹介を行った。さらに、食や工芸品、文化体験への関心が高いことも踏まえ、和菓子作りや歌舞伎鑑賞体験等を紹介した。セミナーとともにネットワーキングの時間も設け、意見交換を行った。
参加者の中には実際に訪日経験のある人もいたが、全体的には十分な日本の情報を持っている人は多くない。セミナー後に寄せられた質問としては、目的地としては東京・京都などのゴールデンルートは認知しているが沖縄のビーチはどうか、訪問に適した季節、夏の暑さについてのアドバイスといった一般的な情報から、サプライヤーについての相談、イタリア語ガイドの手配についてなど具体的な相談も寄せられた。今後とも継続的な情報提供を行いながら、インセンティブ旅行目的地としての日本の認知度向上に向けた取り組みを行っていく。
【インドネシア市場】
2025年のインドネシアからの訪日客数は、11月までに55万人を超え、年間として過去最高であった2024年の約52万人を大きく超えることが予想されている。インドネシアからの訪日旅行は、個人手配が8割と言われているものの、企業が実施するインセンティブ旅行も盛んで、インセンティブ旅行に特化した旅行会社も少なくない。JNTOジャカルタ事務所では旅行会社を対象とした訪日インセンティブ旅行団体への情報収集及びギブアウェイによる支援や、商談会等の場での情報提供を行っており、今回はそれらの取組から見えてくるインドネシアにおけるインセンティブ旅行のトレンドをお届けする。
まず、インセンティブ旅行が盛んであるのは、当然ながら企業数も多い首都ジャカルタ及びその周辺地域となっている。事務所に寄せられるインセンティブ旅行に係る相談の大半もジャカルタ周辺の企業のものであり、JNTOが10月に参加した商談会(Indonesia Travel Expo 2025(ITE))においても、インドネシア第二の都市であるスラバヤ会場では個人旅行や教育旅行に関する問い合わせが多かった一方で、ジャカルタ会場ではインセンティブ旅行に関する問い合わせが多く寄せられた。特に日本の各地域のインセンティブに係る支援メニューや、ツアーの行程をアレンジしてくれるランドオペレーター情報についてのニーズが高く、複数回日本へのインセンティブ旅行を実施している旅行会社からは、ゴールデンルート以外のインセンティブ旅行に適した宿泊施設やアクティビティ情報についての問い合わせもあった。
訪問先については、都道府県別では東京、大阪がやはり圧倒的に多いものの、エリアごとに見てみると東京周辺に次いで多いのは富士山エリア(山梨、静岡)、関西という結果になった。実際に各団体の行程表からは、東京周辺に滞在しつつ富士山エリアまでは足を延ばしてみるという団体や、東京から大阪まで移動する間に富士山エリアに立ち寄る団体が多く確認でき、富士山のニーズが高い。
一方で、最近では、経由便を利用して福岡や北海道に直接入り、東京や大阪を経由せずに帰国するというツアーも増えつつある。旅行会社へのヒアリングでは、これらの団体は既に訪日を経験しており、回を重ねるごとにゴールデンルート以外への関心も増えていくという状況が見て取れる。
旅行時期に関しては、インドネシアからの訪日旅行全体としては学校休暇のある6~7月、12~1月、桜のシーズンとラマダン(断食月)明けのレバラン休暇の時期である3~4月がピーク時期となっているが、インセンティブ旅行だけを見てみると、5月や10月、2月の実施が多く、ピーク時期が一般観光と異なる点が特徴となっている。繁忙期を避けて費用を抑えようというニーズと、家族旅行シーズンを避けて出来るだけ多くの参加者に参加してもらいたいという企業側の意図があるようだが、これらの時期に受入れを増やしたい地域や施設にとっては、インセンティブ旅行をターゲットにするという戦略も考えられる。
一部では、経済成長に陰りが見られたり、国内での所得格差が拡がってきているとの見方もあるものの、インドネシア全体としては2035年頃まで人口ボーナス期が続き、年5%程度の経済成長が見込まれると言われている。実際にジャカルタだけを見ても、2015年から2025年のまでの10年で最低賃金は約2倍となっており、2026年当初においても、前年比約5%の上昇が見込まれているなど、経済発展や所得の向上は続いており、今後もインセンティブ旅行を含め訪日旅行の拡大が期待できる。
【香港市場】
香港市場は一般観光において成熟した訪日市場の一つであり、訪日リピーターの割合が極めて高い点が大きな特徴である。観光庁の「インバウンド消費動向調査(2025年7~9月期)」によれば、香港を含む訪日旅行者のうち90%が訪日経験2回以上のリピーターであり、さらに10回以上訪日している旅行者も33.9%を占める。このような高いリピート率を背景に、香港ではインセンティブ旅行の分野においても日本は人気が高い。
インセンティブ旅行の主催企業業種と団体規模 旅行会社へのヒアリングから、インセンティブ主催企業の業種は、保険・金融業界が中心であるが、製薬会社、電機メーカー、士業(弁護士など)といったプロフェッショナル系企業も多いことが挙げられる。団体規模は30~200名程度が一般的だが、特に保険会社の場合は300~1,000名規模の大規模団体も珍しくない。
主な訪問先と目的地選定のポイント 訪問先については、フルサービスキャリアの直行便が就航している東京、大阪、福岡、札幌が主要な目的地となっている。インセンティブ旅行は短い滞在期間の中で大人数を効率的に移動させる必要があるため、空港から2時間以上移動が必要な地方都市は選ばれにくい。また、40名以上の団体ではホテルやガラディナー会場のキャパシティの面からも、大都市での実施が中心となる傾向が強い。
標準的な日程と行程内容 旅行日程は3泊4日が標準で、初日は到着後の自由行動、2日目にチームビルディングや会議、3日目に観光とガラディナー、4日目に帰国する構成が一般的である。観光内容としては、観光地の訪問はもちろん、アウトレットなどのショッピングスポットが強く求められる。また、観光コンテンツとしては、一般団体旅行や個人旅行では体験できない特別な体験や工房見学といった要素も求められている。宿泊施設としては、大人数を受け入れ可能な5つ星の外資系ホテルが好まれ、ホテルの規模とガラディナー会場の有無が目的地選定に大きく影響している。
手配リードタイム 旅行手配のリードタイムとしては、300名以上などの大規模団体は出発の1年前から6か月前に、30〜200名規模の中小団体は6か月から3か月前に問い合わせが入るケースが多い。大型団体については早期のホテル確保が不可欠である。
競合先と行き先の選定基準 日本の競合としてアジアでは台湾、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、そして中国国内が強い人気を持ち、ロングホールではヨーロッパやオーストラリアも選択肢に入る。これら競合国・地域と比較した際、インセンティブ旅行の目的地選定では、①大人数を収容できる5つ星ホテルの有無、②ホテルまたはユニークベニューにおけるガラディナー会場の確保、③直行便の就航状況、④到着後の移動時間、⑤食の選択肢、⑥その国でしか体験できない特別な体験、⑦ショッピングの充実度といった点が重視される。
旅行会社から訪日インセンティブ誘致のための要望
訪日インセンティブ誘致のための情報提供や支援の取り組みに際しての参考として、旅行会社から寄せられた主な要望については次の三点を挙げる。
第一に、新規開業ホテルに関する情報提供であり、とりわけ部屋の広さ、収容可能人数、館内レストランのキャパシティ、ガラディナー会場といった詳細情報が求められている。
第二に、観光やチームビルディングにおいて新規性や特別感のある体験の紹介、またはその提案できるDMCの紹介である。香港市場の顧客は訪日経験が多いことから、「特別な演出」や「WOW体験」、「同旅行に限定された特別体験」へのニーズが非常に高い。また、地域ならではの文化体験や食事内容の提供も参加者の満足度向上につながる可能性が高い。
第三に、インセンティブ誘致に関する支援の拡充である。旅行会社からは、例えば空港での歓迎式の実施、ガラディナー会場において地域文化を活用したパフォーマンス、特別体験の提供といった、魅力的な支援メニューの整備を望む声が上がっている。
【中東市場】
中東地域市場において訪日旅行の人気が急速に高まりつつある。2025年1月~11月には2019年同期比で約2.7倍となる約24万人が中東地域市場から訪日しており、レジャー観光分野では訪日旅行の強いトレンドが数字にも表れ始めている中、MICE、特にインセンティブ旅行の分野においても同様の兆しが見られている。JNTOドバイ事務所にて行っている現地旅行会社との商談・ヒアリングでは、インセンティブ旅行においても日本が旅行先候補のひとつに挙がり、また実際の手配に繋がるケースも発生しているという話が聞かれる。今回は、中東地域の現地旅行会社がインセンティブ旅行を手配する際に重視しているポイントや日本の受入側に求められる対応について、現地旅行会社への最新のヒアリング結果を踏まえて紹介したい。
実施側が現地旅行会社へインセンティブ旅行を依頼する際、渡航先が予め明確に決まっているケースは少なく、一般的には実施側の①予算、②人数、③想定エリア、④旅行中にどのような体験がしたいか、といった基本的な条件のみが提示され、旅行会社がこれらの条件を満たす渡航先を2~3カ国ほど提案し、その中から実施側が目的地を選定する流れとなっている。そのため、旅行会社から旅行先候補として日本を提案してもらうためには、現地旅行会社へのセールス時やウェブサイト・SNS等を通じ、最新かつ具体的な情報を日本側から継続的に提供することが不可欠である。特に日本は、熟知している現地旅行会社スタッフがまだ限られる新規市場であることからも、継続的な情報提供は最初のステップとして非常に重要だ。なかでも需要が高いのは、グループ向けの文化体験やイベント、宿泊施設、交通手段、レストラン(特にハラル対応を実施しているもの)等の情報で、大阪・関西万博のような国際イベントへの訪問も好まれる傾向があり、イベント関連の最新情報はニーズが高いことも分かった。
また、インセンティブ旅行の受入側に求められるポイントとして重視されているのは、「その国ならではの体験を団体向けに提供できるか」という点であり、特に中東地域においては従業員同士の信頼関係構築が重視される傾向にあるため、チームビルディングに繋がる「意義のある文化体験」の要望が多い。また、当市場では参加者に富裕層が含まれる場合も多いため、上位カテゴリーの客室を備える宿泊施設やガラディナーの開催、イスラム教徒が多く占める市場特性から祈祷スペースや団体でのハラル対応の食事手配、場合によってはアラビア語対応が可能な通訳・ガイドの手配等、当市場ならではのニーズにもいかにきめ細やかに対応できるかどうかが鍵となる。受入側に対し一定の対応負担が伴う可能性もあるものの、中東地域市場は他市場と比較して高い消費額が期待されることも踏まえた上で戦略的に取り組みを検討する価値のある市場だと言える。
企業側のニーズと現地旅行会社が把握している情報、受入側の体制が合致すれば、ロングホールである日本もインセンティブ旅行の候補先となり得、中東地域から日本へのインセンティブ旅行誘致には将来的な大きな伸びしろがあると考えられる。JNTOドバイ事務所としても、日本の旅行先としての注目度が高まっている今こそ、興味・関心度をさらに押し上げ、インセンティブ旅行を中心としたMICE分野の往来を積極的に推進していきたい。
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