ここが知りたいコンベンション「予算作成と収支管理」について

「予算作成と収支管理」について

このコーナーでは、国際会議開催の準備に必要な情報をお届けいたします。第2回目は、国際会議主催者の皆様を悩ます、予算作成と収支管理についてご紹介します。

  • 1. 予算の作成

    • 1-1. 予算作成の進め方

      国際会議の開催が決定すると、日本への誘致を検討した際に作成した収支予算案(収入計画と支出計画)をもとに新たに予算案を作成する。この際には、細部まで検討を加え、できるだけ実質的で具体的な予算案を作成するようにする。
      予算は、一度作成したら終わり、というものではなく、会議開催準備の進捗に伴い、その都度収支の項目や内容の見直しを行い、最終的な実行予算を作成する。

      予算作成のポイント

      予算作成にあたっては、会議規模の把握と会議場の選定などいくつか基準となるポイントがある。金額の大小だけではなく、現金の出入り(キャッシュ・フロー Cash flow)を会議の準備スケジュールに沿って検討し、資金計画を作ることも大事である。財団法人など年度予算で動いている団体が主催のひとつとしてかかわ る場合は、年度ごとの収支予算と決算を求められる場合があるので、注意が必要である。

    • 1-2. 暫定プログラム案の作成

      収支予算を算出するために、まずわかる範囲の情報をもとにして下記の基本項目の検討を行う。基本項目の設定が固まれば、大体の収支予算が算出できる。その後、検討した項目をもとに、暫定のプログラム案を作成する。

      1 参加者数(国内、国外、同伴者等の区別)の把握 参加登録料収入、参加人数から会場規模を選定する等
      2 抄録(アブストラクト)受付数 受付作業にかかる人件費、登録費支出等
      3 発表論文数(オーラル、ポスターの別) 論文登録数から規模を想定、発表会場選定等
      4 パーティーの種類と参加者数、パーティー参加費(有料か無料か)の設定 参加費収入、参加人数分の飲食費支出、会場選定等
      5 展示会の有無(ある場合にはその規模) 出展料収入、展示会開催にかかる経費の算出等
      6 ツアー、エクスカーションの種類と数、参加費(有料か無料か)の設定 参加費収入、実施費用、開催内容計画等
      7 招待講演者(Invited Speakers)の数 負担する場合の旅費、宿泊費支出、内容等
      8 同時通訳(Simultaneous Interpretation)の有無 (言語数、会場数など) 通訳人件費、通訳機材費等
      9 印刷物や制作物の種類と数量、ページ数などの仕様、作成時期 印刷物作成費用等(前回会議のサーキュラーやプログラムがあれば、参考になる。)
      10 コングレスバッグの形状など 作成費(作成する資料の種類によって異なる)等

      その他、できるだけ会議の開催イメージを具体的に描いてみる。この暫定プログラムに基づき、後述する本格的な収支予算や不足する額の寄附金募集計画、助成金の申請等を検討する。

    • 1-3. 予算管理について

      金銭の出納は、極力予算計画に忠実に行う。しかし、実際には、参加者数の増減、寄附金募集の動向、物価の変動、その他の諸事情により、収入・支出ともに増減が発生する。
      財務委員会は、参加申込み数や寄附金の募金状況等に伴う収入の変化と、想定外の経費発生に伴う支出の変化の双方に留意する。必要に応じて収支予算と実際の差異を考慮し、項目や積算内容を修正した修正予算案を適宜作成する。

  • 2. 収入予算

    • 2-1. 財源

      財源は大きく分けて次の項目が考えられる。

      No. 財源 詳細
      1. 会議登録料 正参加者・学生参加者・同伴者などの参加登録料。過去の会議の例や関連会議とのバランス、および支出予算との兼ね合い等を検討して登録料を決定する。また早 期登録割引を設け、料金に差をつけるのが通例となっている。これは、事前登録を推進することにより早めに参加者数の見込みを立てたい、キャッシュ・フロー を考慮し、早めに現金を手に入れたいなどの理由から行われることが多い。
      2. 主催団体の自己資金 主催学会や母体団体などで、国際会議開催のために積立てた資金や、学会の理事や評議員などの幹部が資金を拠出して積立てた資金などをさす。
      資金的に多少資金に余裕のある団体が国際会議開催の受入機関となる場合には、数年前から資金を積立てるとともに、会員から国際会議開催費用として会費を徴収して準備することもある。
      3. 補助金・助成金 国際会議開催のための補助金・助成金制度については、開催地の自治体もしくはコンベンション推進機関が制度を持ち助成を行うところ、文化・学術を振興する目的で設立された財団など公益法人が行うところと、様々な形態で行われている。
      また、財団法人など公益法人の補助金・助成金制度は、会議の目的が団体の活動、事業の趣旨に合致し、一定条件を満たすものであれば、会議開催経費の一部を援助してくれる場合がある。条件はそれぞれ違うので、その都度照会する必要がある。
      4. 展示収入 会議に併設して行う展示会(Exhibition)*に対して、各出展者が支払う出展料をさす。特に募金の厳しい状況下においては、この展示収入をいかに確保するかが、収入予算を計画するうえでの大きなポイントにもなっている。
      *商業展示(Commercial Exhibition)ともいう。
      5. 販売収入 プロシーディングス・論文集などの販売収入など。
      6. 広告・スポンサー収入 会議のプログラム、抄録集などへの広告掲載料としての収入。また会議のウェブサイトへのバナー広告の収入など。
      7. 協賛セミナー 関連の企業や団体から、会議開催中のランチョンセミナーやシンポジウムのスポンサーを募集する。その際には、会場や機材の費用を協賛セミナー開催費として請求する。
      8. パーティー等収入 歓迎パーティー、バンケット、ディナー、エクスカーションなど各種催事の参加料など。ただし、参加登録料にパーティー費用が含まれている場合は対象外になる。
      9. その他収入 雑収入や銀行利子など。
      10. 寄附金 企業などから国際会議開催への寄附として集めた資金。
      「III.募金活動」の項で詳しく説明する。
    • 2-2. 収入予算の作り方

      財源は大きく分けて次の項目が考えられる。
      上記に述べた収入項目のなかで、各項目の実現可能性をよく検討して収入予算を作成する。
      例えば、500名の会議で総支出金額が5,000万円とすると、収入金額の例として右のような構成が考えられる。

      項目 金額
      登録料 @5万円×500名 2,500万円
      助成金(自治体、助成財団等) 300万円
      展示会収入 @10万円×50社 500万円
      寄附金 1,600万円
      その他 100万円
      5,000万円
  • 3. 支出予算

    • 3-1. 総論

      国際会議の支出経費は、大きく次の4つに分けて考えることが一般的になっている。

      支出経費とその内容 全体経費に占める割合の目安
      1. 事前準備費 会議開催前にかかる経費 約30%
      2. 会議開催費 会議開催中の主に本会議にかかる経費 約55~65%
      3. 事後処理費 会議終了後にかかる経費 約5~10%
      4. 募金経費 募金にかかる経費 5%未満
    • 3-2. 収入と支出予算のバランス

      収支予算計画を作成すると、どちらかの金額が大きく(通常は支出が多すぎる)なり、収入と支出の合計金額に差異を生じる場合が多い。国際会議は原則として、赤字でも黒字でもいけない。予算作成の段階では特にこの点に気をつけたい。
      収支のバランスがとれた予算計画を行うためには、収入・支出の各項目を見直し、細かく金額を調整する。その結果完成した予算案の原案を関係者で検討し、さらに実現性を考慮して適宜見直しを行い、実行予算案として完成させる。

  • 4. 収支の管理

    収支管理は言いかえれば、予算管理である。会議の準備・運営が、予め決められた予算のとおり進行しているか、差異が生じていないか、会計規定に基づいて管理監督することである。
    収支管理は通常、財務委員会が責任を持つ。財務委員会は通常、開催の1~2年前くらいは半年に1回程度、また会期が近づいてきた段階で2~3ヶ月に1回程度の割合で行い、予算執行について審議し、今後の対策を立てる。

    • 4-1. 収入の管理

      事務局の最寄りの銀行に普通預金口座を開設し、国際会議の専用口座とする。収入の種別ごとに口座を開設すると、入金確認や整理をする際に便利である。たとえば、登録料口座、展示会出展料口座、寄附金口座、その他である。

    • 4-2. 支出の管理

      支出については、交通費や文具など消耗品を購入するための日常の出費と、印刷物制作費や会場費など大口の支払い(通帳)を分けて考える必要がある。いくらの金額以上を大口として考えるのか、事務局として内規を作成し、それに基づいて処理を行うとすすめやすい。

  • 5. 決算

    会議が終了したら、決算の準備に入らなければならない。収入については、会議の事前段階の収入と会議期間中の収入(たとえば、当日登録料や物品・抄録集販売など)の集計をすみやかに行う。
    支出についても、内容と金額を確認し、組織委員長や財務委員長の承認を得てから、関係先に支払いを行っていく。この場合、事前に定めた予算の枠内で収まっていればよいが、変動している場合もある。慎重に予備費や収入金額の推移を見合わせ、検討する。

    • 5-1. 会議終了後の収入金額の確定

      登録料や展示収入、寄附金収入など、収入としての金額を各々確定していく。登録料であれば、当日参加者の登録料や、事前にキャンセルの申し出があった方へのキャンセル料等の返金を済ませ、登録料としての収入金額をかためる。
      また、銀行利子など雑収入が発生している場合は、その金額も忘れず計上する。

    • 5-2. 支出金額の確定

      支出については、事前段階で発生した経費、会議期間中に発生した経費、募金活動に伴って発生した経費については、それぞれの時期に確実に記録しておく。会議終了後発生する経費としては、事務処理の人件費、通信費、最終の組織委員会や各種委員会の開催経費と旅費、そして礼状、報告書などの編集印刷費がある。
      このほか、会議ではプロシーディングスを発行する場合がある。全ての支出金額が確定しないと決算を行えないので、印刷が終了し納品されるまでは、決算を終えることができない。

    • 5-3. 会計監査

      規模が大きい会議では、会議終了後に第3者による会計監査を受ける場合が多い。通常は、公認会計士などに依頼して行う。これに備えて、帳簿への収入・支出の記入や通帳・請求書・領収証などの証票類を、きちんと整理して保管しておかなければならない。

    • 5-4. 決算報告

      まずは、組織委員会へ決算報告を行う。たとえば、事務局もしくは財務委員会にて、上記の会計監査を終えて、決算が終了した場合は、組織委員会にてその報告を行い、承認を得る。また、寄附金をいただいた個人・企業や補助金・助成金をいただいた団体等へは、会議終了後、会議の開催報告とともに決算報告を行う。
      決算報告については、財団や団体等で決まった書式がある場合には、それに従って行う。

※さらに詳しい情報をご希望の方は、当機構発行の「国際会議マニュアル」をご提供いたしますので、お問い合わせ下さい。

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