ここが知りたいコンベンション「募金活動(資金調達方法)」について
「募金活動(資金調達方法)」について
このコーナーでは、国際会議開催の準備に必要な情報をお届けいたします。第3回目は、国際会議主催者の皆様を悩ます、予算作成と収支管理についてご紹介します。
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1. 基本的な考え方
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1-1. 総論
国際会議の主催者にとって、資金調達は最も重要であり、かつ頭の痛い課題である。国際会議の開催にはかなりの費用を必要とする。本来は、会議参加者が支払う参加登録料で、全ての経費をまかなうのが原則である。しかし、会議参加者が個人で負担できる金額には限度がある。また、過去に会議が開催された際の参加 費を踏襲する場合も多い。日本で開催するときだけ高く設定するわけにはいかないという問題もある。
開催経費を、参加登録料や主催者の自己資金などでまかなえる例は、政府機関などが主催する会議を除くときわめて少ない。ほとんどの国際会議において、財源が不足する分を寄附金にあおいでいる。
寄附金集めにあたっては、主催者として次のような心構えが必要である。
寄附金集めは、主催者にとって最重要の仕事である。
国際会議の開催件数が多くなっており、寄附金を獲得するにはきびしい競争があるという認識を持つ。
「誰かにまかせておけば、なんとかなる」という他人まかせの考えではなく、「自ら動く、自ら歩く、自ら汗を流す」という意識、覚悟でのぞむ。
募金活動にあたっては、「国際会議の成果をできるだけ具体的に社会に還元する」ことを明確にして臨む。 -
1-2. 募金活動をはじめる前に
募金活動をはじめる前に、まずは「自助努力」について強調したい。いかなる経済状況の下でも、寄附のお願いにいった場合、必ず自助努力をどのように行っているかを具体的に質問される。これに備えて、以下のような事柄について検討を済ませておく必要がある。
「会議参加者の数をもっと増やせないか?」
参加者の数が増えれば、登録料収入が増えるので、寄附金収入に頼る比率が小さくなる。
学会のような学術会議の場合は、応募した演題が採用され、発表の機会を与えられれば、発表者は必ず参加する。また、発表者に同行する参加者が増える可能性もある。こうした状況をふまえて、発表論文数を増やす工夫をすることも一考を要する。
「自己資金として、学会や協会内で事前の積立金を検討する。」
学会や協会として、事前段階から会議開催に向けて資金の積立を行う。あるいは、学会や協会の幹部に依頼して、会議開催のために資金を提供していただく可能性を検討する。
「支出の費目やその内容について、経費の削減を行えるところはないか厳密に検討する。」
支出の内容や金額、数量が妥当なものかどうかを充分に検討する。
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2. 募金委員会の設置
組織委員会の幹部が中心となって、寄附金という財源を確保するために、募金委員会を組織する。できれば、募金を依頼する業界に人脈を持つ方がつとめるのが望ましい。
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3. 課税上の優遇措置
募金活動を効果的に進めるためには、寄附を依頼する相手方(法人・個人)の経費処理とその課税上のポイントについて、理解しておくことも重要である。
一般に、寄附金を拠出する法人(企業や団体など)にとって、寄附金を出すことは、その額面にかかる税金を考えると、1.5~2倍の金額を支払うことになる といわれる。そのため、募金活動を行うにあたっては、寄附金に対する課税上の優遇措置を講じてあるかどうかがポイントになる。
課税上の優遇措置とは一般的に、「寄附金を出した法人や個人がその費用を経費として(損金として)処理し、税金の対象にならない」ことをいう。-
3-1. 寄附金の種類
国際会議に関する寄附金は、次の3種類に分類される。
- 一般の寄附金
- 特定公益増進法人への寄附金
特定公益増進法人とは、公共法人、公益法人等その他特別の法律により設立された法人のうち、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する法人をいう。 - 財務大臣による指定寄附金
財務大臣による指定寄附金は、法人税法第37条第4項第2号に定められており、公益法人等に対する寄附金のうち、以下の条件を満たすものとして財務大臣が指定したものは、全額損金に算入できる制度である。
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3-2. 損金算入限度額の計算方法
寄附金は一般には、損金としては扱えず課税対象となる。しかし以下の条件により、寄附を行う法人にとって損金に算入できる限度額が設けられている。
- 一般の寄附金
所得額×2.5%×1/2+資本金等の額×0.25%×1/2 - 特定公益増進法人に対する寄附金
特定公益増進法人に対する寄附金は、その寄附金の合計額と寄附金の損金算入限度額のいずれか少ない金額が損金に算入される。損金算入限度額を超える部分の金額については、一般の寄附金の額に含められる。 - 指定寄附金
寄附額の全額を損金算入できる
- 一般の寄附金
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3-3. 個人からの寄附金
個人の方々からの寄附については、所得税法第78条により、国や地方公共団体への寄附金、特定公益増進法人への寄附金および指定寄附金については、「特定寄附金」として所得税控除の対象となっている。
課税上の優遇措置については、いくつか制約があるので、慎重に考えなければならない。たとえば、次のとおりである。
寄附金について財務大臣による指定を受けるためには、かなりの事前準備と時間を要する。また財務大臣への申請は、組織委員会などの任意団体ではなく、法人格を持つ団体が行う必要があるなどの条件をともなう
特定公益増進法人が、国際会議の主催団体もしくは共催団体になりえる場合は、特定公益増進法人への寄附という形をとることができる。これは、寄附する側 にとってはお金を出しやすいというメリットがある。しかしながら、その特定公益増進法人は、「国際会議の開催テーマや内容が、その特定公益増進法人の主たる目的の業務に関連しなければならない」という制約がある。
以上に述べたように、課税上の優遇措置は募金活動の大きなポイントとなるため、慎重に検討する必要がある。
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4. 募金依頼の実際
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4-1. 後援や協賛の依頼
国際会議開催にあたり、関係業界や団体にはあらかじめ国際会議への後援や協賛を依頼し、了解を得ておく。
後援や協賛の団体はたくさんあったほうが、資金集めは楽になる場合が多い。なぜなら、寄附依頼を受けた団体担当者は、その国際会議と自分の団体との関係を考えて寄附の検討を行うからである。
後援や協賛の依頼を受けた団体では、理事会などの手続きを踏む必要がある場合もあり、早めに依頼し、正式な書面を届ける(送付する)ことが望ましい。
寄附金の依頼にあたっては、国際会議の開催趣旨を説明し、理解をいただくために募金趣意書を作成する。募金趣意書を作成する段階では、後援や協賛の依頼中 で正式に承認がとれていない場合には、「(予定)」あるいは「(申請中)」として掲載する場合もある。 -
4-2. 寄附金以外の依頼
寄附依頼先の企業や団体によっては、寄附金としてではなく、会議登録料や参加費を教育研修費や調査研究費の名目で支出できる場合がある。また、国際会議で作成する印刷物を、広告宣伝費として支出できる場合もある。寄附を依頼する際のオプションとして検討しておきたい。
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4-3. 募金委員会の活動
組織委員会の主な幹部が中心となって、募金委員会を構成し募金活動を行う。最初に、どういう企業や団体に寄附をお願いするのか、候補先リストを作成する。
このリスト作りにあたっては、過去の国際会議や国内での関連会議での協賛企業や団体、および商業展示の出展企業や、学会誌への広告出稿企業・団体など広く情報を集める。企業名、住所、連絡先窓口の担当者名等、情報はできるだけ詳しく集めたい。
寄附を依頼する業界のリーダー企業はどこか、業界全般あるいは該当企業の経営状況を把握しておくと役に立つことが多い。インターネットや新聞などの各種情報源を活用する。 -
4-4. 寄附申込みへの対応
具体的に寄附金の申込みがあった先には、領収書、損金算入ができる寄附金であることの証明書類(特定公益増進法人への寄附の場合は、監督官庁の印が押印されているものの写し)、礼状などを事務局より送付する。寄附金の依頼状況、入金状況を事務局にてまとめ、募金委員会の場などで報告する。
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4-5. 募金委員会での検討と推進
募金委員会は定期的に開催し、募金活動の進捗状況を各委員から報告を受ける。それらの結果をとりまとめて検討し、必要に応じて募金活動の戦略や計画の練り直し、担当割り振りの見直しなどを行う。募金目標額が達成できるよう、募金委員会が一丸となってことにあたる態勢を整備する。
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5. 募金活動のタイムテーブル
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一般的な募金スケジュール
No. 時期 内容 1. 24ヶ月(2年)以上前 - 募金依頼先候補の調査・分析、リストアップ
- 募金計画作成
- 各種助成財団・官公庁・自治体等への申請スケジュールの確認
2. 18~24ヶ月前 - 課税上の優遇措置申請、募金趣意書(案)の作成
- 募金活動の開始(ファースト・アプローチ / 官公庁、助成財団、関連学会・協会、主要企業等)
- 各種助成財団・官公庁・自治体等への申請
3. 12~18ヶ月前 - 募金活動本格化
4. 9~12ヶ月前 - 募金活動の見直し、フォロー(適宜)
- 寄附の申込み、入金がはじまる
- 礼状・領収書等の発送
5. 0~9ヶ月前 - 寄附団体・企業への「特典供与」(*)の連絡
- 寄附の入金状況チェック
- 募金活動の最終確認
6. 会議終了後 - 寄附をいただいた企業へのお礼状発送
- 各種助成財団・官公庁・自治体等への終了報告
- 会計報告
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6. 寄附金以外の資金調達
寄附金以外の資金調達にもさまざまな手法がある。また最近では、寄附金に頼ることが難しくなってきている。寄附金によらない資金調達の手法として、補助金・助成金(Grants)の獲得がたいへん重要になってきている。
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6-1. 会議開催地からの開催補助金
国際会議観光都市に指定されている都市で行う場合には、その都市のコンベンションビューローに尋ねてみるとよい。最近は都市ごとに、国際会議を誘致しようと開催補助金制度を整備している。国際会議を開催するにあたって有利な都市が複数あれば、開催地を決める際に比較検討することをすすめる。
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6-2. 公益法人からの助成金
国際会議に対して助成してくれる公益法人などの団体へ、助成金を申請する。団体ごとに申請の締切日があるので、その期日を予め把握し、期日までに必要な申請書を提出する。
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6-3. 日本学術会議共同主催による国費負担
日本学術会議が国際会議の共同主催を引き受けた場合、開催経費のいくらかを国費で負担してもらえる。
日本学術会議への共同主催の申請は、開催年度の3年度前の11月末日。場合によっては、日本開催決定の前から、打診する必要がある。
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※さらに詳しい情報をご希望の方は、当機構発行の「国際会議マニュアル」をご提供いたしますので、お問い合わせ下さい。