第12回グローバルヤングアカデミー総会・学会

広島大学 大学院医系科学研究科 教授
日本学術会議若手アカデミー GYA 総会国内組織分科会 委員長

新福 洋子 先生

九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門・九州大学分子システム科学センター 准教授
日本学術会議若手アカデミー GYA 総会国内組織分科会 副委員長

岸村 顕広 先生

2022年6月、日本学術会議若手アカデミー(注1)が主催したグローバルヤングアカデミー(注2)総会・学会が九州大学にて開催されました。国際会議を若手研究者が主催することや、国際会議が地域社会・次世代研究者にもたらす効果について、本会議の組織委員長・副委員長を務めた新福洋子先生(広島大学)、岸村顕広先生(九州大学)にお話をうかがいました。

注1: 45歳未満の若手研究者を基本とする日本学術会議の内部組織
注2:世界100カ国から200人のメンバーと366人のアルムナイ(卒業生)で 構成され(2022年6月現在)、「世界中の若手科学者に声を与えること」をビジョンに掲げて分野横断的に活動する若手研究者の国際的なネットワーク。


今回の会議テーマは「感性と理性のリバランス:包括性と持続性に向けた科学の再生」。
一般市民が科学研究に関わる「シチズンサイエンス」の普及や、社会における大学の在り方、科学者にとっての創造性を扱ったセッションに加え、高校生やこれから研究者を目指す世代に向けたサイドイベントも実施されました。

会議概要

会議正式名称 第12回グローバルヤングアカデミー総会・学会
2022 International Conference of Young Scientists and GYA Annual General Meeting
開催期間 2022年6月12日~2022年6月17日
開催都市/会場 福岡 / 九州大学 伊都キャンパス(ハイブリッド開催)
参加者数 791名(リアル参加 139名/オンライン参加 652名)
ウェブサイト http://gya2022.com/
幅広い世代を巻き込んだ会議の開催

「今回の会議では、幅広い世代で議論をすることを目指し、セッション登壇者には若手研究者のみならず、業界にインパクトのあるベテラン研究者にも参加していただきました。先生方からのインプットを受け、若手が中心となった議論は非常にポジティブで面白いものになりました」(新福先生)
「上の方々ともつながりがあるという中堅に近い立場や、様々な分野の研究者が所属する若手アカデミーの特性を活かし、広く世代・分野の異なる登壇者をお呼びすることができました。また、意外なところで人と人が繋がり、登壇をお願いするようなケースもいくつかありました。平田オリザ先生にご参加いただいたのも、そのひとつです。新たな試みという点では、同じ九州大学でも今まで繋がりのなかったアート関係の研究者と一緒に、今回の会議テーマの実践として、アートとサイエンスのコラボレーションに取り組みました。このような研究者が同じ大学の先生としていらっしゃるのは心強く、会議を通じてできた新しいご縁を、今後も温めていきたいと思います。」(岸村先生)

議論活性化の工夫

本会議では若手研究者同士の議論を深める場としてワークショップが用意されました。
「オンラインで参加者のモチベーションを保てるかという懸念がありましたが、ワークショップのようなインタラクティブなものであれば、よりコミットしてもらいやすくなるのではと考えました。実際にやってみると、豊かな発想で面白いアイディアがたくさん生まれました。本会議が終わった後、GYAのメンバーはWhatsAppのグループを使用してワークショップの感想をポストしてくれたのですが、ポジティブな反応が多くあり、好評でした」(新福先生)
海外からの参加であってもWhatsAppですぐに反応がわかるのは、SNSが普及した現代ならでは。活発な議論の裏には、このような工夫もされていたそうです。
「私がモデレーターを担当したセッションは、テーマとなる概念が抽象的で難解だったので、先に短めの説明動画を全員に配信し視聴してもらいました。その際に、トピックの真意を考えられるような簡単なサーベイを行ったことで、事前に参加者へのインプットができました。それが本会議での活発な議論につながったと思います」(新福先生)

会議の開催地への波及効果

シチズンサイエンスの普及というテーマのもと、市民公開講座や高校生、大学生や大学院生のような研究者を目指す世代とのセッションも行われました。
「こうしたセッションを大学の授業の一つとして位置付け、学生にはオンラインでの本会議と大学で行った地域イベントの両方に参加してもらいました。特に地域イベントでは、対面で分野や世代を超えた議論ができたため、オンライン授業に疲れている学生の満足度も高かったようです。英語ディベートワークショップでは、大学生や大学院生のほかに英語ディベートに慣れている高校生も呼んだところ、英語のディベートが初めてだった大学院生にもうまく刺激を与えることができました。
 市民公開講座が行われた福岡市科学館では、以前より展示内容が小学生向けに偏りやすいという悩みがあり、ターゲット層を大学に近いところまで引き上げたいという意向がありました。それを踏まえ、高校生が大学の先生と交流しながら未来について議論するというワークショップ形式の講座にしたところ、結果として、お互いのねらいが一致したイベントになりました。今後も継続して行われるイベントがここから生まれれば良いなと思います」(岸村先生)

自分の大学で開かれた国際会議に参加するという経験をした九州大学の大学院生や次世代の研究者たちについて「自分が参加したイベントに近いものをやってみようという子が出てきてくれると嬉しい」(岸村先生)という期待も。
「若手研究者の私が大会長として活動したことで、若手のうちでも会議を主催できるのだという意識を持ってもらえたらいいですね。また、私には小さな娘がいるのですが、会場に設置された託児サービスが時間外で預けられない時は、娘と手をつないで登壇しました。以前、高校生から、女性研究者でキャリアを積むのは大変ではないか?という質問を受けたことがありますが、このような姿が、周りの理解があれば子どものいる女性でもできる、というメッセージになればと思います」(新福先生)

会議を終えて、今後の展望

「会議の開催だけで終わりではなく、ここで繋がったネットワークや行った議論を次に活かしていくことが大事です。このため、現在、今回の会議の登壇者を集めた国内でのシンポジウムの開催や国際会議での会議報告、ブックレットの制作を企画しているところです。何らかの形で会議の内容を残し、会議終了後も継続して今回のテーマについて考えてもらうきっかけになればと思います」(新福先生)
「形に残るという意味では、今回の会議の取組として九州大学のキャンパス内に制作した“植物の一年時計”は、植物が1年にわたり順に開花するガーデンアートです。今後も継続的にお世話をしていくことになりますので、今回の会議開催の一つのシンボルとして、これを地域コミュニティと関わるきっかけにできないだろうかと話しているところです」(岸村先生)