世界で唯一のアルミニウムに特化した国際会議「第18回アルミニウム合金国際会議(ICAA18)」が、富山県で開催

富山大学 学術研究部 都市デザイン学系

松田 健二 教授

世界で唯一のアルミニウムに特化した国際会議「第18回アルミニウム合金国際会議(ICAA18)」が、2022年9月4日~8日の5日間、富山県で開催されました。
日本で3回目の開催となる今回は、計24か国、477人の研究者・技術者が参加し、「Aluminium and its alloys for zero carbon society」をメインテーマに、今後のアルミ産業を取り巻く課題やこれからの展開につながる研究や技術が議論されました。
前回のフランス・グルノーブルでの会議は完全なオンライン形式でしたが、今回は海外より90人を超える対面参加者を迎え、オンラインを併用したハイブリッド形式が採用されました。そこでの苦労や工夫、会議の成果など、実行委員長をつとめた富山大学の松田健二先生にお話をうかがいました。

会議概要

会議正式名称 第18回アルミニウム合金国際会議
ICAA18(The 18th International Conference on Aluminium Alloys)
開催期間 2022年9月4日~9月8日
開催都市/会場 富山 / 富山国際会議場、ANAクラウンプラザホテル富山
参加者数 会場360名+オンライン参加117名以上
ウェブサイト https://www.icaa18.org/
開催地の富山県は日本のアルミ産業の中心地

今回の開催地である富山は、日本有数のアルミ生産量を誇る県です。水資源や水力発電による電気が豊かな地域性は、製錬に多くの水と電気を必要とするアルミの生産に最適です。また、製品の輸送に適した河川や海が多いことも、産業が発展してきた理由になっています。
「富山県のアルミ産業の歴史は、大正時代に世界的な科学者である故・高峰譲吉博士が、富山の地形を見てアルミ産業の誘致を提言したことをきっかけに始まりました。現在、富山県ではアルミを県の基幹産業と位置付けており、産官学の連携で新事業の創出や人材育成を目指す『とやまアルミコンソーシアム』を設立するなど、活発な取り組みを行っています。アルミに携る県内企業も多く、こうしたことが今回のICAA18が富山県で開催された背景になっています」

現地・オンライン両方の参加者が満足できる環境

本会議では、対面とオンラインそれぞれの参加者に公平性が保たれるよう、様々な配慮がなされました。
たとえば、オンライン会議プラットフォームでは、参加者同士がコミュニケーションを取りやすい環境が用意され、このプラットフォームを活用して参加者同士が活発に自己紹介や写真の投稿をしたり、オンライン・オフラインでの参加者どうしの個別ミーティング開催の呼びかけが自発的に行われていました。また、優れた発表者に対する表彰が行われたポスター発表では、現地に来られない発表者への公平性を担保するため、アブストラクト、Eポスター、3分ビデオをあらかじめ発表者が準備し、当日は全員オンライン上のみでの発表としました。その他、企業展示ではウェブサイトで閲覧できるビデオを準備しチャットでのコミュニケーションを可能にするなど、ハイブリッドならではの利点を活用する様々な工夫が行われました。
「許可をいただいた先生方の講演についてはビデオ撮影を行い、一定期間オンデマンドで視聴できるようにして、発表後でも質問や交流ができるようにしました。また、より多くの国の方がオンラインで参加しやすくなるよう時差を考慮して、従来とはプログラムの実施時間帯を変更し、早朝に北米の方の発表を、お昼休憩を長くとって午後から夜にかけてアジアやヨーロッパの方の発表を組むなどの工夫をしました」
また、このような環境を用意するとともに、今回も、積極的な会議参加への動機づけと若手研究者へのエンカレッジメントとして、若手研究者の発表内容や業績をICAA国際委員会が審査し、アルミニウムの科学、技術、応用に重要な影響や見識をもたらした若手研究者への表彰プログラムを実施しました。国やキャリアを問わない意見交換ができたことや、著名な研究者と対面あるいはオンラインで直接言葉を交わせたことが、若い研究者にとって大いに良い刺激になったようです。

フレキシブルな対応によりスムーズな開催が実現

ICAA18の主催者である一般社団法人軽金属学会では、今回の開催のために、組織委員会、実行委員会を設置して、5年近い年月をかけて入念な準備を行いました。当初は対面形式での開催を前提としながら、ハイブリッド形式の案も平行して用意し、感染症の状況および海外参加者の動向を窺いながら、どちらの形式でも開催できる体制を整えてきました。 また、富山県側でも、助成金の支給条件を一部緩和し、国際会議場の使用料金の割引を実施するなど、柔軟な対応を実施しました。
「オンライン形式での発表については、データの漏洩に危機感を持つ研究者も少なからずいるので、参加そのもののキャンセルが出るのではという危惧がありました。この点については、参加者の研究者としてのモラルを期待して、研究者倫理に反することはしないようにという通知を徹底しました。学会や行政のフレキシブルな対応もあり、結果的には、多くの海外の方に安心して参加いただけたと思います」

地元も国際会議の開催を熱心にバックアップ

このような対応に加え、地元からの熱心なバックアップがあったことも、スムーズな開催を後押ししました。富山コンベンションビューローは、県内観光のインフォメーションデスクを設置。運営ボランティアの希望者数も多く、地元の方が久しぶりの富山での国際会議開催を楽しみにしていたことがうかがえました。また、地元の企業や団体は、アルミ産業のパネル展示や、アルミ材料を利用した水素燃料電池車「ミライ」のデモンストレーションなどを実施しました。
「ミライをご覧になった海外参加者の中には、カーボンニュートラルを目指す技術がこうした形になって実際に使われていることに驚かれた方もいらっしゃいました。印象に残っているのは、富山コンベンションビューロー様が富山駅の新幹線改札口に掲示いただいた『Welcome to Toyama』という歓迎看板です。海外参加者の方が喜んでその写真をオンライン会議プラットフォームにアップされていたことは、私自身もとてもうれしく感じました。また、久しぶりに富山で国際会議が開催されたことをNHKほかの報道で知った一般の方も多くおられ、富山で開催できたことを喜んでいました」

富山県で開催した主催者の想い

カーボンニュートラルの実現に向けた地球規模の取り組みが進む今、企業や研究者が国や地域を越えて情報を共有することはとても大切です。ICAA18は、そんな交流の機会を育む機会にもなりました。発表内容も、基礎研究に加えて、課題解決に向けた応用研究に関するものも多く、まさに私たちが直面している様々な問題について議論できる国際会議だったと言えるでしょう。
加えて、国内企業がカーボンニュートラルについての意識をさらに高める機会であったとともに、地元企業にとっても、日本の技術力を海外に訴求しながら、海外の情勢を知る場にもなりました。
「アルミニウムはリサイクルしやすく、SDGsにも貢献できる素材です。ゼロカーボン社会をテーマにした今回の国際会議が、日本で、とりわけアルミ産業が盛んな富山県で開催できたことには、大きな意義があったと思います」

海外の参加者も大いに楽しむことができたICAA18

ICAA18では、富山周辺の自然の魅力を味わえるエクスカーションや、産業を活かしたテクニカルビジットも用意され、海外からの参加者は、会議自体を楽しむことはもちろん、観光についても積極的に参加されていたようです。 海外から参加された方々の声をご紹介します。

「日本は清潔かつ安全でホスピタリティが行き届いており、さらには人々もみな素晴らしく、本当に大好きな国です。富山に来たのは初めてでしたが、日本の新鮮な魚介類を堪能することもでき、期待通りの場所でした。会議の会場やそこで使用された音響システムも素晴らしく、また、オンラインと対面がシームレスであることにも驚きました。国際会議全体が非常に円滑に運営されていることに、とても感心しました」(Ph.D. Rajeev Kamat)

「今回の会議は、アルミニウムに関する学会にとって、今後に向けた素晴らしい例になったと思います。富山県はこのような会議をするうえで、非常に良い場所だと思います。コンパクトな都市はサイズ感もちょうど良く、雰囲気もいいですし、人々はとても親切です。他の国からの参加者たちも心から楽しんでいる様子でした。この街にはポジティブな印象しかありません」(Prof. Dr. -Ing. Jürgen Hirsch)

「今回の会議には300人以上の現地参加があったと聞きました。コロナ禍という状況を考えると、これほどの参加者の数は驚異的だと思います。日本でもうひとつ感銘を受けたのは、優れた技術と高い美的価値が見事に融合している点です。これは他の国ではなかなか感じられないことです」(Dr. Ashim Kumar Mukhopadhyay)

海と山に囲まれ、豊かな自然にも恵まれた富山で開催されたICAA18。会議場からも富山城址が見えるという環境で実施された国際会議を、海外の参加者は大いに楽しんだようです。また、バンケットでは富山の伝統芸能が披露されるなど、地域の魅力を発信する機会にもなりました。