誘致・開催レポート

次世代につなぐフォトニクス研究と国際会議誘致への情熱

PIERS 2025 Chiba(2025 Photonics and Electromagnetics Research Symposium)は、2025年11月5日から9日、千葉・幕張メッセを舞台に世界から約1,600名の研究者を集めて開催されました。欧米やアジアから幅広い年代の研究者が集い、活発な議論が行われました。特に次世代の研究者の育成に高い関心を持つこの分野は、人材育成にフォーカスしたプログラムが大きな特徴です。PIERS 2025 Chiba大会委員長で、国際電波科学連合(URSI)副会長およびJNTO MICEアンバサダーを務める中央大学名誉教授 小林一哉先生に次世代の研究者育成における国際会議の役割についてうかがいました。

中央大学 名誉教授 小林 一哉 教授 MICEアンバサダー

会議概要

会議正式名称 2025年フォトニクス・電磁波工学研究に関するシンポジウム
(2025 Photonics and Electromagnetics Research Symposium)
開催期間 2025年11月5日~9日
開催都市/会場 千葉 / 幕張メッセ 国際会議場
参加者数 1,638名

日本では4回目の開催

PIERSはPhotonics and Electromagnetics Research Symposiumの略称で、フォトニクスと電磁波工学の研究者が集まる大型国際会議です。この分野において、日本は常に世界をリードしてきました。PIERS 2025 Chibaは2001年大阪、2006年東京、2018年富山に続き日本では4回目の開催となり、開催規模は47カ国1,638名と成功裏に終了しました。また、天皇陛下をお迎えした開会式には1,000名以上が出席し、大きな注目を集めました。

開会式の様子

開催都市 千葉について

今回のPIERS 2025 Chibaの誘致活動はコロナ禍の中で行われました。開催地の選定にあたってはJNTOのサポートを受け、複数の都市をご提案いただきました。その中でも千葉は成田・羽田両空港からのアクセスが良く、東京が近い点や滞在中に参加者が楽しめるプログラムを組みやすい点でも優れた開催地でした。会場となった幕張メッセ国際会議場は、プレナリーやセッション、展示、ポスター、控室までの動線が分かりやすく、円滑な運営を行える点が大きな魅力でした。また、駅やホテル、飲食・ショッピング施設、レセプション会場が徒歩圏内に集積しており、主催者にとっての運営のしやすさはもちろん、参加者の皆様にも快適にお過ごしいただける会場であると感じています。加えて、千葉県・千葉市・ちば国際コンベンションビューローから豊富な財政支援を受けられることは大きなポイントでした。会期中には、国際本部役員40名の屋形船ツアーが実現し、約2時間かけて幕張からお台場までを往復し、参加者から大変好評を得ました。

会場近隣の日本庭園「見浜園」
屋形船ツアーを楽しむ参加者たち

若手に多くのチャンスと育成の機会を与える国際会議

PIERSでは学生論文コンテストや40歳以下の研究者への表彰制度など、若手支援プログラムを積極的に実施しています。今年から、学生には3分間で研究を要約し発表してもらう場を設けました。発表時間を短縮し、内容を明確に伝えるトレーニングを通じて、研究者としての実践力を高めることが目的で、今回、多くの学生が挑戦しました。
また、2018年の富山大会より、日本の提案により「Young Scientist Award」(若手研究者学術賞)という新たな賞を設けています。この賞は、優れた研究成果をあげ質の高い発表を行った若手研究者を、世界中から参加する研究者の前で、会期中に表彰するものです。こうした表彰は受賞者にとって名誉であると同時に、その後の研究活動に欠かせない国際ネットワークの構築に大いに役立ちます。若い研究者がグローバルにデビューするきっかけとなるため、富山大会以降、国際的にも定着した取り組みとなっています。

若手支援プログラムの表彰式

市民にもひらかれた科学 -- 市民公開講座と科学体験教室

研究分野が継続性を持って発展し続けることは世界の科学者共通の課題であり、そのために若手研究者の確保は重要です。日本では近年、電気・機械系を志す学生が減る傾向にあり、特に女子学生が少ない点には危機感を持っています。こうした状況を打開し、後進の育成を図るため、会期中に市民公開講座および科学体験教室を開催しました。市民公開講座では、地元・千葉大学ならびに株式会社ウェザーニューズの第一線で活躍する研究者・実務家が登壇し、「電磁気で地震を予測できるのか」「天気予報を支える電磁波技術」をテーマに講演されました。先端科学を市民にわかりやすく紹介する貴重な機会となり、地域住民との交流や次世代育成につながる社会的レガシーの創出にも寄与しました。また、科学体験教室では目に見えず、耳で聞くことができない「電波」というものを体感し理解してもらうために、木枠のAMラジオを作ってもらいました。この中から一人でも電波に興味を持ち、将来、この分野に進む学生が出てくれればと願っています。

科学体験教室の様子

MICEアンバサダーが考える「国際会議誘致」の意義

継続的な研究とその成果による産業の発展が、日本の国際競争力の向上につながることは研究者共通の願いです。そのためには、世界に向けた研究成果の発信と、他国の研究者との交流が必須です。国際会議の日本開催はあらゆる世代の研究者にとって、成長の機会と世界とつながる場を国内で得られるという2つのメリットがあります。こうした積み重ねが国の競争力を高める原動力になるのではないでしょうか。日本が目標として掲げる「国際会議開催件数世界5位」(*)は、単に順位の問題ではなく、その結果が各分野における日本のプレゼンスの向上につながると考えています。これが、私がMICEアンバサダーとして国際会議を積極的に誘致している理由です。

今回のPIERS 2025 Chibaでは、JNTO・千葉県・千葉市・ちば国際コンベンションビューロー、ならびに会場の幕張メッセ、運営事務局のコンベンションリンケージ、すべての組織が一体となり、総力をあげて会議準備・運営を行ったことで、会議はPIERSの歴史に残る大きな成果をあげることができました。私は運営組織を代表し、これらの組織・団体の関係者の皆様に深く感謝いたします。

歓談する各国の参加者たち

国際会議誘致に必要なこと

私が、自身の経験を通して考える国際会議誘致成功の秘訣は以下の3点です。

- 広い国際的なネットワークを若い頃から築いておくこと
- 世界の研究者との信頼関係を構築し、それを維持すること
- 国や自治体、国内外の学術団体・研究機関を巻き込む調整力を持つこと

国際会議誘致は検討段階から誘致決定に至るまで、長い道のりを通らなければなりません。国内での必要なプロセス(立候補を審議・決定、開催候補地の選定、招致委員会の立上げ)に始まり、続いて開催提案書の作成、国際本部への立候補、理事会・役員会等でのプレゼンテーション、そこでの審議を経て開催地が決まるまでの長いプロセスの中では、常に戦略的かつ精力的なロビー活動が不可欠です。決定権や影響力を持つ役員に多くのメールを送り、日本開催への支持を呼びかけなければなりません。メールを送ることで、競合国に手の内を見せる可能性もありますが、受け入れ環境、日本の安全性と清潔さ、日本人のホスピタリティには大きな強みがあり、そうした日本の魅力を前面に出してアピールすることが非常に重要です。

PIERS 2025 Chibaでは、2022年に誘致決定後、前回大会にあたる2024年成都大会の際に、JNTO成都事務所ならびにちば国際コンベンションビューローから、2025年千葉大会への参加を呼び掛けるPR活動にご協力いただきました。他の会議誘致においても、JNTO(国の代表としての位置づけ)とコンベンションビューロー(自治体の代表としての位置づけ)の双方の職員に海外で行われる会議にご同行いただき、ロビー活動にご協力いただいたことがあります。国際会議誘致にあたっては、主催団体・国・自治体・PCO・会場の関係者が結集し、All Japan体制で臨むことが重要であり、これによって国際本部および決定権を持つ役員への説得力が高まります。この点は、現在、国際会議の誘致を検討されている方に参考にしていただきたい大事なポイントです。

日本の未来を担う次世代へのエール

私は長年、光・電磁波分野の研究に携わり、若い頃から多くの海外研究者と信頼関係を築いてきました。次世代の研究者の皆さんにも是非世界とつながる経験をしてほしいと思っています。国際会議の誘致は日本の学術的なプレゼンスを高めるだけでなく、若手が世界へ羽ばたくための「場」を国内に生み出し、研究分野全体の発展にもつながります。確かに国際会議の誘致・開催には多くの準備と当日までの困難がありますが、それに勝る大きな成果を得られますので、これからの研究者の皆さんには、積極的に国際会議を日本に誘致していただきたいと思います。私自身も、私が中心となって誘致にかかわった2026年および2028年に国内で開催される2つの国際会議の準備が始まっておりますし、その後も複数の国際会議の誘致を計画しています。

*「世界5位の目標」:「観光立国推進基本計画」において、令和12年までにICCA(国際会議協会)の統計における国際会議の開催件数世界5位以内を目指しています。

ポスターセッションの様子

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