誘致・開催レポート
市民の力で国際会議を成功に導く
~第20回世界バラ会議福山大会 2025~
MICE(国際会議・研修・展示会等)の開催が地域にもたらす効果の一つとして「レガシー効果」が挙げられます。中でも、地域住民のシビックプライド(市民としての誇り)の醸成は、多くの自治体が目指す開催成果の一つです。
2025年5月、広島県福山市で開催された「第20回世界バラ会議(World Rose Convention 2025)」は、日本文化と地酒を楽しんだ福山城公園プロムナードでのウエルカムレセプションをはじめ、市内のあらゆる会場を活用した多彩なプログラムと幅広い世代の市民と参加者の交流の機会が豊富に設けられていたことが特徴です。今大会には28カ国から723名が参加し、多くの市民による心のこもった「おもてなし」で、「バラ会議史上、最も素晴らしい大会」と高く評価され、成功裏に幕を閉じました。
この国際会議の成功の背景には、行政と一般市民を含む地元ステークホルダーによる長年にわたる周到な準備があり、会議成功のキーパーソンである福山市市長公室 世界バラ会議推進室 室長の大本貴淑氏にお話をうかがいました。
会議概要
| 会議正式名称 | Rose Convention 2025 in FUKUYAMA 第20回世界バラ会議福山大会 2025 |
|---|---|
| 開催期間 | 2025年5月18日~24日 |
| 開催都市/会場 | 福山市市長公室 世界バラ会議推進室 |
| 参加者数 | 723名 |
「ばらのまち 福山」のスタート
本会議を語るには、福山市が「ばらのまち 福山」と呼ばれるに至った歴史を説明する必要があります。戦後、荒廃したまちの復興と人々の心に潤いをもたらす平和の象徴として市内の公園に1,000本のバラが植えられました。市民と行政が愛情を込めて育てたバラはやがて大きな花を咲かせ、多くの市民に愛される存在となります。バラを育てる活動はその後市全体へと広がり、1985年にバラを「市の花」と制定。2016年には市政100周年を記念して、100万本のバラを咲かせることに成功し、名実共に「ばらのまち福山」を実現しました。
MICE誘致と戦略
多くの自治体と同様に福山市も今後、交流人口を増やし、国際競争力を強化することが必要だと考えています。そのため、観光とMICEの振興組織として「福山観光コンベンション協会」を設立するとともに、2020年3月には「福山市MICE戦略」を制定し、官民が連携してMICEの誘致・開催を推進しています。世界バラ会議は、世界中のバラの愛好家、専門家が一堂に会する国際会議であることから、「ばらのまち福山」の強みを活かし、この会議の誘致に取り組みました。
市民の理解と参画を促す取り組み
開催が決定した当初は、市民の反応は必ずしも良かったわけではありません。「バラ会議とは何か?」「何のために行われるのか?」といった戸惑いや疑問の声もありました。そこで市民の関心を高めるため、バラ会議への「応援宣言」を広く募集する活動を始め、最終的には3,533名の方々がこの宣言に参加しました。このような活動により、ばら会議に対する市民の認知度と関心が高まり、会議への積極的な参画につながったと考えています。
「みんなで創る みんなで盛り上げる みんなで輝く」がコンセプト
本会議では200名を超えるボランティアが大会運営を支えました。参画した市民ボランティアの方々には事前の研修会や説明会を通じて、国際会議開催の意義やボランティアの役割の重要性を理解いただきました。こうした取り組みの結果、参加者の期待を上回る「おもてなし」ができ、閉会式におけるWRC会長からの「これまでの中でベストな会議であった」という賛辞につながったと考えています。
運営以外にも多くの方々にボランティア活動に参画いただきました。特にバラ愛好家の協力は今回の成功に不可欠であり、市内各地でのバラの整備や、プログラム内容の検討など、あらゆる面で活躍していただきました。福山市には「ローズマインド」という言葉があります。私たちはバラを育てることによって育まれる「思いやり・やさしさ・助け合いの心」があふれるまちを目指していますが、それを体現していたのが、まさに市民の皆さんでした。
デイツアーを通じた地域の魅力発信
会期中は、参加者向けに市内各地をめぐる「デイツアー」を実施しました。特に人気を集めた鞆の浦では、階段や坂道が多いため、高齢の参加者にも配慮したルート設計や案内を行い、快適に楽しんでいただけるよう工夫しました。中学生やボランティアの皆さんが英語の原稿を準備して説明を行うなど、企画段階から全て鞆の浦の地域の方々にプログラムを考えていただき、地元の力でツアーを支えました。
鞆の浦以外の訪問先においても、小中学校や保育園、地域住民がローズマインドでもてなし、海外からの参加者に大変喜んでいただきました。
地元産業界との連携
福山市はものづくりの町としても知られています。バラ会議の誘致を契機とし、市内の企業が2年以上前から市の事業の一環としてバラを使った商品開発に取り組みました。その中には、剪定後のバラの枝を加工してデニム生地に織り込むというサステナブルな商品も生まれています。長期にわたるこのような取組はバラ会議終了後の「レガシー」として福山市に残っていくと考えています。
シビックプライドの醸成を実現
今回は世界バラ会議の開催に合わせて、Rose Expoなど関連するイベントを各地で開催し、多くの市民に楽しんでもらうことができました。直接参画したボランティアはもちろんですが、一般の市民にとっても「ばらのまち福山」への愛着を実感できたのではないでしょうか。
国際会議で福山の良さと日本の文化を伝え、海外からの参加者に心から喜んでいただくこと、自らもそのイベントに何等かの形で参加することが市民それぞれの喜びとまちへの誇りにつながっていったと考えています。
閉会式では、ボランティアが「スタンディングオベーション」で賞賛を受けました。これは、世界バラ会議史上、初めての出来事だったそうです。今回の経験と実績は、今後の福山市のMICE推進をしていく上で、かけがえのない財産となりました。この成果を糧に当市においても本格的に国際会議の誘致を進めていきたいと考えています。