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2023年10月02日 MICE市場トピックス(9月)

毎月、海外の複数市場について、JNTO海外事務所が収集したMICE関連の状況やトピックスをご紹介します。※2023年8月末時点の情報です。

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【ベトナム市場】

<市場動向>
夏休みシーズンであることから家族旅行の需要が一定数あるものの、前月に引き続き、市場全体としては需要が低調気味である。主な要因として、継続した輸出産業の不振が様々な産業にも波及したことによるベトナム経済不況が挙げられる。一方、第4四半期に向けて社員のモチベーション向上を狙う目的でインセンティブ旅行を開催する企業が増加傾向にある。また、9月頭の連休(9月1日~4日)や、10月以降の紅葉シーズン向けツアーも販売が開始されたことから、訪日市場にも一定の活気が戻ってきている。懸念事項としては、国内旅行の費用も値上がっており、近隣諸国への海外旅行費用とあまり変わらないことから、ツアー価格が安価である中国やタイ、マレーシア等が旅行先に選ばれる傾向にある。

<旅行会社等へのヒアリング結果>
(全体)
経済不況が影響して、国内ビーチや東南アジア諸国、中国、台湾が人気な旅行先となっている。9月頭の4連休発(9月1日~4日)のツアーも多く販売されているが、ツアーや航空券価格の高騰および国内観光地が混雑する予測も出ていることから、2~3泊の短期旅行選ばれる傾向にある。大手旅行会社では、連休中の東南アジアや日本、韓国、台湾、中国などの人気な国への海外ツアーを販売しているが、例年と比較して集客が遅いという回答が多い。

(訪日)
・夏の日本は暑さと台風が多いことからオフシーズンと言われており集客が難しい。多くの訪日希望者は紅葉シーズンに集中すると予測されている。
・紅葉シーズンは桜シーズンと並びハイシーズンとなるため、既に多くの旅行会社では日本をはじめ、韓国、台湾の紅葉鑑賞ツアーを販売しており、問合せも多い。また、既に紅葉シーズンの販売目標の50%以上を集客している旅行会社が多くなっている。旅行会社では、10月末~11月中旬頃を訪日旅行のピークと予想している。
・8月上旬に中部国際空港利用促進協議会主催で中部エリアの自治体や民間企業と現地旅行会社の商談会が開催された他、8月下旬には九州観光機構主催で九州観光セミナー商談会がハノイ、ホーチミンで開催されるなど、日本国内の観光関連団体の動きも活発になってきている。

(インセンティブ旅行関連)
8月の訪日インセンティブ旅行の催行本数は例年と比較すると少なくなっており、旅行費用が安価な近隣諸国または国内を旅行先に選定する傾向が多かった。一方、不況の影響をあまり受けない一部大手企業(金融や保険)が日本をインセンティブツアー先に選んだ案件が一定数あり、40名以下の小グループから大手企業による100名を超える大型団体もあった。8月はオフシーズンによる観光地の混雑回避と旅費が低価格であることが、企業インセンティブには好影響をもたらしたと推察する。旅行会社は、これからの紅葉シーズン到来および第4四半期の年末決済時期も相まって、多くの企業が余剰予算を活用した訪日インセンティブ旅行を計画することに期待を寄せている。

大手旅行会社Saigon Touristによる紅葉シーズンの訪日観光商品広告
大手旅行会社Saigon Touristによる紅葉シーズンの訪日観光商品広告
九州観光セミナー商談会(ハノイ市)
九州観光セミナー商談会(ハノイ市)

【タイ市場】

旅行会社ヒアリングによると、コロナ後訪日インセンティブの需要は引き続き好調である。タイは訪日リピーターも多い市場であることから、主催企業は単に訪日というだけでなく、「特別感」のある企画提案を求める。特別感というとき、「他の人がまだ体験していないプレミアムな体験ができ、人に自慢できる」などがあげられる。また、日本らしい豊かな自然景色を見ながら、カジュアルなハイキング・サイクリング体験や花火鑑賞などもコースに組み込んだ行程も出てきている。タイ旅行会社へのセールス時には、旅行会社の担当者が主催企業に企画提案することを想像し、地域の観光コンテンツが如何に特別であるかを分かりやすく説明できる資料を用意すると効果的である。「目的地ごとでの写真撮るべきスポット」の紹介もあるとよい。加えて、大型ショッピングモールへの買い物を行程にいれると満足度は更に高くなる。

【カナダ市場】

JNTOトロント事務所は、8月15~16日にかけてトロントで開催されたThe Canadian Meetings + Events Expo (CMEE)に、ブース出展を行った。この展示会には3,620人が参加し、そのうち7割が会議、インセンティブ旅行、イベントを計画するMICEプランナーであった。MICEプランナーの参加数は前年比33%増加し、45%以上が初めての参加だった。JNTOブースでは2日間合計で63件の商談が行われ、全体として2024年に日本に行くインセンティブグループはわずかであったが、かなりの数のMICEプランナーが、2025年と2026年の会議およびインセンティブの目的地として日本を検討していた。

CMEEの日本ブース
CMEEの日本ブース

【中国市場】

8月10日の訪日団体旅行及び航空券+ホテルのパッケージ商品の販売解禁を受け、旅行会社は自社のSNSや店舗にて訪日旅行商品販売を全面的に再開した。
MICE関係では、北京市内の複数の旅行会社から、政府系、薬品業界、医療業界、素材業界等の訪日インセンティブ旅行や視察旅行を予定しているという情報が得られた。しかし、8月24日にALPUS処理水の海洋放出が報道されてからは訪日団体旅行の一部キャンセルが発生。MICEでは、現状企業のMICE案件に影響が出たとの情報は聞かれていないが、政府系の視察団体等は一部延期やキャンセルが出ている。
広州市内の大手旅行会社は団体旅行解禁前と比べ問合せ・申込数がほぼ2倍になるなど出足好調で、MICE関連も顧客からの相談を受けていたが、ALPUS処理水放出の影響により9~10月出発の団体旅行を中心に一部キャンセルが発生、インセンティブツアーでは秋以降の出発予定がキャンセル見込みなどの影響も出ている。多くの旅行会社は訪日旅行商品の広告・宣伝を一旦休止し、世論の動向を伺っている状況である。

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