世界のアカデミアとつながる国際会議の魅力

若手研究者はどのように国際会議を自身の研究に活用しているのでしょうか。JNTOでは、日本学術会議若手アカデミーの岩崎代表、安田副代表、また日本学術会議若手アカデミー グローバルヤングアカデミー総会国内組織分科会の新福委員長、岸村副委員長をお招きし、若手研究者にとって国際会議やシンポジウムを開催する意義について、お話をうかがいました。

岩崎 渉 先生
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 教授
日本学術会議若手アカデミー 代表
安田 仁奈 先生
宮崎大学 農学部 海洋生物環境学科 准教授
日本学術会議若手アカデミー 副代表
新福 洋子 先生
広島大学 大学院医系科学研究科 教授
日本学術会議若手アカデミー GYA 総会国内組織分科会 委員長

岸村 顕広 先生
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門・九州大学分子システム科学センター 准教授
日本学術会議若手アカデミー GYA 総会国内組織分科会 副委員長
川﨑 悦子(ファシリテーター)
日本政府観光局(JNTO)MICEプロモーション部 部長 
(以下、敬称略)
学術の未来を担う若手研究者たち
~日本学術会議若手アカデミー~

川﨑: まず、日本学術会議若手アカデミーについてお聞かせください。

岩崎: 私たち4人が所属する日本学術会議若手アカデミーは、日本学術会議内に組織されていて、45歳未満の若手研究者50名から構成されています。メンバーは、人文・社会科学、生命科学、理学・工学にまたがる多様な分野の研究者で、日本各地の大学・研究機関から集まっており、研究環境の向上などの課題解決や学生への研究の魅力の認知促進、また、地域社会や民間企業との連携など幅広い活動に取り組んでいます。こうした活動の一つとして、世界的な若手研究者の団体であるグローバルヤングアカデミー(GYA)と連携して、2022年6月に「第12回グローバルヤングアカデミー総会・学会」を日本で開催することになりました。

川﨑: GYAとはどのような組織なのですか。

新福: GYAは、世界94カ国から200人のメンバー(任期5年)と328人のアルムナイ(卒業生)で構成(2021年6月時点)され、「世界中の若手科学者に声を与えること」をビジョンに掲げて分野横断的に活動する国際的なネットワークです。現メンバーは男女約半数、女性が男性より数人多く、多様性が重視されている点も特徴的です。日本からは、これまで11人の研究者がメンバーに選出されました。
 日本学術会議若手アカデミーでは、第12回GYA総会・学会の日本招致を働きかけ、現在、2022年6月の九州大学での開催に向けて準備を進めています。会議では、新型コロナウイルス感染症により顕在化した喫緊の課題を議論しながら、科学と社会の新たなつながり方を提案したいと考えています。

国際会議の開催は、将来に向けた
研究ネットワーク構築やフィールド理解の機会

川﨑: 昨今、学術の分野でも日本の発信力強化の必要性が問われているところですが、先生方は具体的にどのような国際的な活動やご経験をされていらっしゃいますか。

岩崎: 私は情報生物学分野の国際学会「国際情報生物学会(ISCB)」で理事を務めており、そのアジア地域における学会大会であるISCB-Asiaを2024年に日本に誘致しようと考えています。これまでも海外で開催された国際会議に参加してきましたが、日本で行われる国際会議を自分がホストすることで、国際学会の研究仲間に自分の存在や研究内容をより認知してもらえますし、今後の研究に役立つ国際的なネットワークの構築にもつながると考えています。

安田: 私は、宮崎大学に世界的な研究者を招聘し、シンポジウムを開催しました。招聘した研究者との関係を深めることができましたし、学生や市民にも貴重な機会を提供できるなど、当初想定していた以上の効果を実感しました。
 また、沖縄でサンゴ礁の会議が開催された際には、オーストラリアのグレートバリアリーフに勝るとも劣らない豊かな日本のサンゴ礁を世界の研究者に実際に見てもらうことができ、嬉しく思いました。フィールド研究者にとって、実際に研究フィールドを見ていただくことは、研究面で国際的なつながりを深めることにもつながると感じます。

新福: 私の研究分野は途上国における助産師教育・妊産婦教育ですが、日本の最新の医療に限らず、医療の介入は最小限にしつつ安全に出産ができるシステムや助産師のケアのあり方などについて、実際に海外参加者に助産施設への視察をいただくことで理解が深まりました。

岸村: 大学側が国際的なイベントの開催を奨励するようになってきており、専門である応用化学の分野で、研究室や学部規模のものから学会・シンポジウムなど、様々な規模のイベントに携わってきました。また、台湾の知人が福岡市内や長崎のハウステンボスで100人規模の学会を開催した際に協力をしたことがあります。小~中規模の会議が多いと思いますが、海外では自分の会議を国外でやりたいというニーズや、それが奨励されることもあるようです。

参加者コミュニケーションを促進する
開催地での体験

川﨑: 先生方が所属されている国際学会の会議やシンポジウムの日本開催が、ご自身の研究内容の理解促進や発信力強化につながっているということが良くわかりました。国内外を問わず、思い出深い国際会議のご経験等があれば教えていただけますか?

新福: 私自身が会議開催に積極的になったのは、2017年にヨルダンで開催された世界科学フォーラム参加がきっかけでした。初日にワークショップがあって参加の若手研究者同士が仲良くなり、これがその後の会議にも活かされ、優れた発表者はグループを代表して登壇者にもなれるなど、若手研究者同士が議論を交わしながら交流できるプログラムがとてもエキサイティングで、わくわくしたことが記憶に残っています。

安田: ヨーロッパでは、東南アジアは概してエキゾチックで豊かな手つかずの自然をもつイメージがあるようですが、日本に対しては先進国のイメージが先行し、日本に豊富な自然や生物の多様性があることを知らない方も多いと感じます。一方で、ひとたび日本を訪れると、すっかり自然豊かな日本を気に入ってくれ、来日するまでは聞いたこともなかったという宮崎の自然の豊かさにも驚くとともに高く評価してくれました。

岸村: 私が以前に開催した会議では、エクスカーションの際に、観光地だけでなく九州大学キャンパス内の先進的な施設を訪問してもらい好評を得ました。福岡では、商店街を貸し切ってレセプション会場として活用し、地元の食や文化を楽しんでもらったり、地元の方々との交流を実現した事例もあります。

安田: 台湾で開催された学会に参加した際、会場付近に夜市があったため、毎晩のように、各国の参加者たちと研究の話をしながら地元の食を楽しみ、文化に触れ、親交を深めることができました。このように、会議会場の外で開催地ならではの街中での飲食の機会の交流を通して将来につながるコラボレーションが生まれることも多くあります。逆に、会場での食事や体験に開催地感がないと少し残念に思います。

岸村: 研究室に来る留学生の中には、日本の漫画やアニメに興味がある学生が多いです。食事のみならず、日本が持つ幅広いコンテンツを生かすことも若い世代も含めた海外参加者を増やすための手段になるのではないでしょうか。

川﨑: 幅広いコンテンツを活用して日本をアピールしながら、「優れた学術研究を行っている日本」ということを知っていただくということですね。

岩崎: 若手同士だからこそ、将来につながる気心の知れた関係を作りやすいとも言えます。また、若手の時に海外から一度自分の拠点に来てもらうことで、その後も様々な場面で協力してもらったり、さらに若い研究者や学生を連れて再来日してもらいやすくなるというレバレッジ効果もあると思います。研究、教育に加え国際会議を自らホストし研究者を日本に呼ぶということは、負担もありますが、論文になる前の最先端の研究を見てもらう機会にもなり、先々の研究に大きなプラスをもたらしてくれると考えています。さまざまな指標において日本の学術レベルが相対的に低下してきていると言われていますが、それでも日本にはこれまで培った多大な学術の蓄積があります。いわば、そのアドバンテージを活用して今のうちに国際会議を日本で開催することも、国家戦略として重要ではないでしょうか。

「第12回グローバルヤングアカデミー総会・学会」

開催期間 2022年6月12日~2022年6月17日
開催都市/会場 福岡/九州大学 伊都キャンパス
ウェブサイト http://gya2022.com/