誘致・開催レポート

ハイブリッド開催のケーススタディー(ヤングリーダーのグローバル・サミット)

2022年5月、東京で次世代リーダーによる世界最大の国際会議One Young World(OYW)グローバル・サミットが開催されます。190を超える国から2,000人以上が参集すると見られるグローバル・サミットの開催を2年後に控え、その機運を盛り上げるため、2020年10月にOYW Tokyo Caucus 2020が開催されました。

One Young Worldは英国を本部とする非営利団体です。影響力のある若いリーダーを支援し、相互につなげるとともに、より責任ある、効果的なリーダーシップを発揮させることで、より良い世界の実現を図ることを目的としています。年1回開催されるサミットは、「ダボス会議の若者版」とも呼ばれ、気候変動から紛争解決に至るまで、世界での喫緊の課題へ取り組んでいます。

全世界で定期的に開催されるOne Young World(OYW)Caucusという会議では、アンバサダーが実際に顔を合わせ、コラボレーションのチャンスを模索し、新たに生まれつつある幅広い課題について見識を深める機会となっています。2018年に初めて日本で開かれたOYW Caucusには、OYW Japanのアンバサダーのみが参加しましたが、今回のCaucusには新しい顔ぶれが加わり、2020年のテーマ「One Young World meets One Wise World(OYWと英知の世界の出会い)」に関する議論を進めました。ここからは、今回、OYW Japanのアンバサダーとして会議の準備・運営に携わった方々の声を紹介します。

ハイブリッド開催のケーススタディー(ヤングリーダーのグローバル・サミット)

会議概要

会議正式名称 One Young World Tokyo Caucus 2020
開催期間 2020年10月23日~25日
開催都市/会場 東京 / BMW東京ベイ・ショールーム およびオンライン配信
参加者数 110名

田村洋祐氏インタビュー One Young World Japanコーディネーティング・アンバサダー 兼Tokyo Caucusリーダー

田村洋祐氏インタビュー One Young World Japanコーディネーティング・アンバサダー 兼Tokyo Caucusリーダー

今回のイベントでは、どのような役割を果たされましたか。

他のアンバサダーと連携しながら、パートナーシップやロジスティクス、マーケティング、パネルディスカッションのデザインの全般的な管理を担当しました。

計画づくりには、どれだけの時間がかかりましたか。

準備は2020年3月に始まったので、6カ月くらいです。Tokyo Caucusでは、チームワークがいかんなく発揮されました。おそらく、コアとして皆が同じ価値観を共有していたからだと思います。まさにインクルーシブ・リーダーシップの実例といえるでしょう。私たちにはそれぞれ、社会問題を解決しようという情熱があります。チームを管理し、素晴らしいチームワークを吹き込むには、統一された目標と目的が重要だと思います。

準備で難しい点はありましたか。

コロナ危機でコストが高騰したため、資金調達が問題となりました。当初、マスクや手指殺菌剤の予算は取っていなかったので。それから、オンラインのライブ配信に切り替える費用も高くつきました。私たちをサポートし、Caucusが終わってからも共通の価値観を育てようとするパートナーが多くいたことは幸いでした。

ハイブリッド・フォーマットでの開催に利点はありましたか。

より多くの人がCaucusに参加できることは、ハイブリッド方式の利点でした。46カ国から390人の参加がありました。また、イベントの直後に参加者のほか、出席できなかった方やオンラインでライブ配信を見られなかった方にも配信できるオリジナル動画も制作できました。

不都合な点については、どうですか。

対面でのイベントの利点は、パネリストが交流できることです。ライブ・ストリーミングで、この雰囲気はなかなか出せません。オーディエンスのパネリストとの交流と、パネリスト同士の交流を深めることが、ともに重要です。

2022年には初めて東京でOYWグローバル・サミットが開かれます。参加する代表団には、どのようなメッセージを送りたいですか。

やはり日本の独自性である。「おもてなし」がキーワードになると思います。東京オリンピックでも、おもてなしが重要なポイントとなっています。他の国におもてなしの心や、協力の文化がないというわけではありませんが、日本人に固有のおもてなしの心で、全世界から参加者をお迎えしたいと真剣に考えています。
私たちは、One Young World東京サミットに世界から参加する方々がそれぞれの国に帰り、日本は独特の文化を持つ国であり、今回の訪日で新たな視点を多く学んだという感想を共有できるよう、日本の独自性を伝えたいと思っています。

他に何か付け加えたい点はありますか。

2022年に東京で開かれるイベントの最終的な目標は、ヤングリーダーや企業の幹部、政府高官や政治家に対して、社会問題に対するそれぞれのコミットメントを続け、拡大するよう働きかけることにあります。私たちの強みは、自分たちの経験に基づくストーリーテリングにあります。2022年の東京サミットに先駆けて、いくつかのイベントも予定しています。これによって認知度が高まり、私たちのコミュニティに加わろうとする人の数も増えることでしょう。日本で開催されるOYWイベントの最新情報と、2020年10月の活動のダイジェスト動画は、One Young Worldの公式ソーシャル・チャンネルでご覧ください。


平原依文氏インタビュー Tokyo Caucus PR&パートナーシップ・マネジャー

平原依文氏インタビュー Tokyo Caucus PR&パートナーシップ・マネジャー

初のハイブリッド型イベントの開催となりましたが、難しい点はありましたか。

はい、ハイブリッド・イベントは簡単ではありません。パートナーと話をした時にも、「どれだけの人が見てくれるのだろうか」とか、「どれだけの人が来てくれるのだろうか」とか、「どんな安全対策を導入できるのか」といった質問が来ました。
私たちはイベント企画の専門家ではありません。参加者やパネリスト、登壇者の健康を守ることを最も心配していました。それが私たちにとっての優先課題でもありました。
オンラインの部分についても、時に不安な部分がいくつかありました。例えば、3日目の「SDGsオリンピック」では、動画を見せてから、オンラインでQ&Aをしたのですが、接続が切れるのではないかという不安はありました。 1回だけ、遅れが出たことはありましたが、概して進行はスムーズにいきました。パートナー(単なるスポンサーではないという意味で、私たちはこの呼び方をしています)の方々も、この点についてはきちんと理解されていました。どんなイベントにも、問題はつきものですから。

オンラインでの参加者はどうでしたか。日本人が主体でしたか。

参加者の約80%が日本人でした。その90%ほどが学生だったと思います。残りの20%は外国からの参加者でしたが、アジアからの参加がほとんどでした。時差の問題があったからだと思います。

ハイブリッド型イベントのメリット、デメリットについては、どうお考えですか。

多くの人が参加できるのが利点です。また、どこからでも参加できます。20%が海外からの参加者だったことは、その証拠です。日本に足を運ばなくても、イベントを視聴できました。それから、パネリストたちは、オンラインで見ている視聴者のことを想像し、自分たちの感情を伝えようと懸命に努めていたと思います。だからこそ、オンラインであっても、非常に情緒的なイベントになったと思います。
その一方で、オーディエンスの反応を見られないことは難点でした。表情が見えないと、話の内容にどれだけ関心があるのか、推し量ることが難しいからです。

きょうはプログラムの最終日ですが、このイベントについて、今のところ何かフィードバックはありましたか。

パートナーからは、このようなダイナミックなやり方でブランドの情報発信をしたのは初めてだという、お褒めの言葉がありました。いつもの一方通行のコミュニケーションではなく、双方向のコミュニケーションで参加者とつながれたという実感があったようです。これは心強いフィードバックでした。パネリストが共有したストーリーについても、非常に前向きなコメントをいただいています。それぞれの会社や戦略だけでなく、個人的なストーリーを伝え、率直な意見を共有してくれたからだと思います。

中尾有希氏インタビュー Tokyo Caucusロジスティクス・マネジャー

中尾有希氏インタビュー Tokyo Caucusロジスティクス・マネジャー

オンライン視聴者の属性はどうでしたか。

視聴者の70%程度が高校生と大学生だったと聞いています。つまり、One Young World Summitに参画し、アンバサダーとなることに関心を抱く可能性のある若い学生です。残りの30%は、パートナー企業からの参加者と海外の視聴者でした。自社がパートナーとなっているOne Young Worldについて、それがどのようなイニシアティブかを知りたかったのだと思います。

オンライン視聴者のエンゲージメントを高めるために、何か手を打ちましたか。

かなり標準的なやり方で進めました。プレスリリースを発表したり、アフィリエイト媒体にこのイベントについて報道と広報を行うようお願いしたりしました。また、FacebookとTwitterでも有償でイベントのプロモーションを行いました。しかし、最も強かったのは個人的なつながりだと思います。One Young Worldには、非常に大きなコミュニティがあります。グローバルな組織として、私たちには数千のメンバーがいますが、その各々が自分のコミュニティに手を差し伸べれば、より大きな人と人のつながりの輪ができ上がる可能性もあります。これがエンゲージメントを達成するうえで最も重要なやり方だったと思います。

参加者からは、どのようなフィードバックがありましたか。

私は平等に関するパネルでモデレーターを務めました。このパネルには、Netflixの「クィア・アイ」でお馴染みのカンさんと、ジバンシィ・ジャパンのCEOクリスティン・エドマンさんが加わりました。このセッションについては、非常に誠実な感じを受けたというフィードバックがありました。私を含め、4人のパネリストのうち3人は、すでに1年にわたってOYWアンバサダーを務めています。それで、自分たちの意見を伝えたり、臆することなく重大案件に取り組んだりすることに慣れていたのだと思います。自分の会社を代表して参加する場合にはいつも、ある種の心の壁があって、本当の意味で正直かつ誠実に発言することは難しくなります。

イベントでの食事はどのように手配しましたか。

実際のところ、食事に対するフィードバックも上々でした。弁当箱は全部、持続可能な素材で作られ、その中身もほとんどがヴィーガンでした。つまり、同じ量の食事を作るのにも、使う水の量が少なくて済んだということです。

2022年に迫った会議に関する抱負や目標をお聞かせ願えますか。

サミットでは、高齢化や、島国であることによって関係が深い海洋生物、そしてジェンダーの平等など、日本と関連性の深い問題をいくつか取り上げたいと思います。One Young Worldの本部はロンドンにあります。昨年のサミットはロンドンで開かれ、来年のサミットはミュンヘンで予定されています。真の意味でインクルーシブかつ公平な組織となるためには、アジアや中東、そしてアフリカも包摂する必要があります。もちろん、その他の重要な問題に取り組みたいとは思っていますが、私たちが日本でホストを務めるというプレゼンスも大事に考えています。インクルーシブ・リーダーシップがなければ、私たちがOne Young Worldとしての任務を全うすることはできないからです。

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