誘致・開催レポート

アドベンチャートラベル・ワールドサミット 北海道・日本(ATWS2023)を開催!

世界最大のアドベンチャートラベルのイベントである「Adventure Travel World Summit (以下ATWS)」が2023年9月に北海道·札幌で開催されました。ATWSには、約65カ国から旅行会社等のバイヤーやメディアが参加する他、地域の事業者·関係者が参加し、アドベンチャーツアー体験やセミナー、商談会等が行われます。
19回目にしてアジア初開催となる今大会開催前に、日本開催に対する期待を主催者であるAdventure Travel Trade Association (ATTA)のCEO、Shannon Stowell 氏に、開催後の感想や振り返りを日本側受入れホストであるアドベンチャートラベル・ワールドサミット北海道実行委員会事務局長(北海道経済部観光局アドベンチャートラベル担当局長)の後藤氏にお伺いしました。

会議概要

会議正式名称 Adventure Travel World Summit Hokkaido Japan
開催期間 2023年9月11日~14日
開催都市/会場 北海道 / 札幌コンベンションセンター
参加者数 773名
ウェブサイト https://events.adventuretravel.biz/summit/hokkaido-2023
Adventure Travel Trade Association (ATTA)
CEO
Shannon Stowell
(シャノン·ストーウェル)氏

アドベンチャートラベルの理想的なデスティネーション~北海道

ATTAは、世界100カ国以上の会員からなる組織であり、会員は、アドベンチャートラベル(以下、AT)のツアーや旅行ビジネスに関わる事業者です。彼らは、グローバルなイベントへの関心が高く、互いの旅のストーリーを語りあいたいという志向が強いため、山や川、トレイル、海といった自然環境に溢れ、それらを体験する機会やその土地の文化を感じられるようなデスティネーションを開催地として選んでいます。
北海道は、例えて言えば【日本版のアラスカ】のような場所で、素晴らしい野生動物に出会える他、アイヌ文化という独特の歴史と文化があるということも、関係者そして参加者にとって非常に興味深い点でした。
北海道は、こうした「自然、体験、文化」の3つが融合する素晴らしいデスティネーションだと言えます。

今回、サミットに先立ち、250人ほどの参加者が3~5日間のプレ・サミット・アドベンチャー(PSA)*に参加します。これまで、私自身はサミットの準備に専念し、PSAに参加する機会はありませんでしたが、今回初めて数日間のツアーに参加します。娘とハイキングやカヤックをするのが楽しみです。また、会議の前日には、800人の参加者全員が参加できるデイ・オブ・アドベンチャー(DOA)*を実施します。約650人が札幌近郊の日帰りツアーに参加し、ハイキングや野生動物との出会い、食、アイヌを含む文化など、さまざまなことを体験する予定です。

*PSA=Pre-Summit Adventure:サミット前に実施されるホスト国・地域を知ってもらう体験ツアーとして道内外で実施
*DOA=Day of Adventure:9月11日に実施された日帰りツアー。ATの定義に基づき、今回は31コース実施。
プレ・サミット・アドベンチャーでのサイクリングの様子
プレ・サミット・アドベンチャーでのサイクリングの様子
デイ・オブ・アドベンチャーでのアイヌ文化体験の様子
デイ・オブ・アドベンチャーでのアイヌ文化体験の様子

開催に向けたオールジャパンによる連携

開催にあたっては、日本の受け入れ側である全ての組織―日本政府観光局(JNTO)、現地の受け入れ先である北海道実行委員会、その他民間セクターの連携が良く取れており、ATWS開催に向けてとても協力的であったため、主催者としても非常に開催しやすい環境でした。
また、会場として提案された札幌コンベンションセンターについては、ATTAとして適切な会場であるかを検証し、決定しました。その後は、会場をATWSのニーズに合わせていくというプロセスが必要になりましたが、その過程もプロフェッショナルで、スタッフの対応も非常に良かったと思います。

一般的に、国際組織が日本でイベントを開催する際は、コミュニケーション面が懸念されるかもしれません。欧米が本部の場合、ラテンアメリカやヨーロッパであれば、ある程度、言葉を理解できるかもしれませんが、日本では事情が違います。しかし、私たちが一緒に仕事をした組織には、言語やその他のギャップを埋められる人材が十分にいましたし、参加者も意欲的な方が多く、言語の壁は問題ありませんでした。国際的なイベントにおいては、言語だけではなく文化慣習が異なる人々が集い、協力する必要がありますので、受け入れ側にコミュニケーションを円滑に進められる人材がいることは非常に重要なことだと思います。

基調講演の様子
基調講演の様子
賑わうネットワーキング会場
賑わうネットワーキング会場

サステナビリティへの取り組み

ATTAにとって、もう一つの大きな要素は、「サステナビリティ」です。使い捨てプラスチックを排除し、食品他の廃棄物削減、代替エネルギー源の確保など、持続可能性に関して多くのことに取り組んでいます。
具体的な例でいうと、使い捨てプラスチックを排除しているためペットボトルの使用は禁止しています。 日本のリサイクル率は高く、80%を超えていますが、初めから使用そのものを排除すれば、イベントにおける何千ものペットボトルのリサイクルに要するエネルギーを減らすことができます。食品廃棄削減も、私たちが受け入れ側へお願いしたことの一つです。二酸化炭素排出量の40%は食品に起因するという試算があります。もし、食品を大量に無駄にしているのであれば、それは不必要な二酸化炭素を排出していることになります。
日本のサステナビリティに関する大きな課題は製品の包装で、多くのものがプラスチック素材で包まれているようにみえます。私たちは、政府や法や制度を変えることはできませんが、私たちにできる限りのことをしていきたいと思います。単に、「今回のサミットを持続可能なものにしましょう」ということだけではないのです。私たちの日常的なビジネスにおいて、どのように持続可能性を実現するか、ということが重要です。
昨年、日本のある省庁を訪問した際に、【30by30目標】*のポスターが掲示されていました。これは非常に素晴らしい取り組みで、日本はハイレベルなサステナビリティ活動を目指し、取り組んでいると思います。真にサステナビリティを実現するためには、政府、企業、NGOの 『魔法のトライアングル』が必要です。私たちは、それを旅行者などにも広げて、ダイヤモンドにしたいと考えています。持続可能性の課題を解決するためには、すべての人が関与する必要があり、旅行者自身も『自分の旅行をもっと持続可能なものにしたい』と思っている筈ですので、積極的に働きかけてほしいですね。

*2030年までに世界の海と陸の30%を保全する新たな世界目標

ATWSの開催効果を継続して残すために

イベントの多くは、【計画、参加、実施、そして終了】で一区切りとなりますが、私たちはそれだけで終わらないようにしたいと思い、数年前からサミット開催地との協力関係を続けています。ATは専門的な分野であり、国際的なバイヤーとの仕事経験が十分にあるサプライヤーが重要な役割を果たします。過去にATWS開催自体は成功に終わったけれども、数年経った時にまだビジネスを継続しているサプライヤーはほとんどいなかったということがあり、ATTAは、この点について身をもって学んできました。
ATでは、バスで移動し、街を案内して寺院を見学する観光とは異なり、ハイキングやカヤックをしたり、人が水に飛び込んだり、熊に出くわしたりすることもあります。
参加者に安全で素晴らしい時間を楽しんでもらうためには、サプライヤーやガイドはより十分なトレーニングを行い、専門的な技術を有することが必要なのです。そして、それらを体験した参加者にはATWSをきっかけにデスティネーションのエバンジェリストとして歩んでもらいたいと思っています。ATWSは1回限りのイベントではありません。私たちはサミットを活性化のピークと捉え、その後どのように効果を持続させるかを考えています。これは受け入れ側も同様で、より多くの労力、資金が必要となりますが、イベントの効果を継続させるための努力として必要です。

マーケットプレイスでの商談も活発に
マーケットプレイスでの商談も活発に

最後に、アジア、そして日本での最初のサミットにとてもワクワクしています。世界64カ国から参加者が来日しますが、ほとんどの人にとっては、初めての日本滞在になります。
今回のサミットは、参加者にとって、初めての体験、新しい知識、日本にある様々な物事とついに繋がるチャンスであり私たちにとって、そして日本にとっても、これから長く続いていくエキサイティングな旅の始まりになるでしょう!

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